医薬品の外観目視検査における要求品質の明確化のために【第8回】

2021/08/13 品質システム

知っておくべき異物の種類について。

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生体由来異物

1. 知っておくべき異物の種類
1.1 異物の分類
 異物については、その由来による分類も含め健康被害のリスクを評価しなければならない。製品中に異物が確認された場合の混入ルートは、その由来により調査対応が異なるため、見極める必要がある。

〇内因性異物:製剤処方や成分特性により生じる濁りや沈殿(ペプチド、タンパク質製剤/注射剤)等

〇外因性異物:製剤処方以外からの混入(製造環境、原料、資材)等

2. 生体由来異物
 毛髪と昆虫類などの生体由来異物は、今なおクレームの上位を占めており、場合によっては製品回収も含めた対応の検討を迫られる。しかし、回収実施の判断は、想定される健康危害などの科学的な根拠に基づくことが原則である。加熱滅菌により製造する注射剤であれば、以下のカタラーゼ試験等により、混入した生体由来異物が滅菌工程前に混入したものか、滅菌工程以降に混入したものなのかを推定できる。滅菌工程以降に混入したと判定された場合、製剤の無菌性は保証されない。
 滅菌工程を経た毛髪や昆虫類であっても、未知ウイルス等を否定することはできないため、外観検査工程で生体由来異物が見つかった場合、出荷判定は慎重に行うべきである。

<カタラーゼ試験>
 カタラーゼ試験とは、製品に混入した毛髪、昆虫が加熱工程を経ているか、あるいはそれ以降に混入したものかを判定する方法である。生物体内におけるカタラーゼの活性が、加熱によって失活する性質を利用した方法である。加熱温度及び時間とカタラーゼ活性の関係を、図表1に示す。
 基本的には、毛髪や昆虫死体を過酸化水素水に浸漬させ、一定時間後の泡立ちを確認する。過酸化水素水さえあれば、あとはシャーレや試験管、ピンセットなどの簡単な実験器具とデジタルカメラなどの記録装置で十分事が足りる。

 

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執筆者について

新井 一彦

経歴 C&J 代表
化学系企業にてバイオテクノロジーを利用した医薬品の探索、開発研究に従事。その後、開発医薬品(無菌製剤)の製造工場立上げに製造管理者として関わりGMP組織体制、基本構想を構築した。
平成17年の改正薬事法完全施行に合わせ、新たに製造販売業を取得するため某ジェネリックメーカーの設立に関与。取締役信頼性保証本部長として総括製造販売責任者の責務を担った。
現在、C&J 代表として、講演、執筆、国内外のGMPコンサル業務活動を推進。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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