GCP入門【第17回】
2021/05/07
臨床(GCP)

GCP省令第35条(実施医療機関の要件)
ICH-GCPには実施医療機関の要件について記載されていない。なのになぜJ-GCP(GCP省令)では規定されているのだろうか。実施医療機関の要件をJ-GCPで規定している根拠を見てみよう。医薬品医療機器等法施行規則第40条(承認申請書に添付すべき資料等)第1項のイロハニホヘト。この中でGCPは「ト 臨床試験等の試験成績に関する資料」である。同条第3項に次が規定されている。
「第1項各号に掲げる資料を作成するために必要とされる試験は、試験成績の信頼性を確保するために必要な施設、機器、職員等を有し、かつ、適正に運営管理されていると認められる試験施設等において実施されなければならない」
つまりイロハニホヘトの試験は適切な試験施設で実施されなければならない。例えば「ヘ 急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、遺伝毒性、催奇形性その他の毒性に関する資料」であれば、GLP省令で規定されている試験施設及び機器や職員及び組織等が毒性試験を行う研究所に適用される。同様に「ト」の試験を行う試験施設である実施医療機関にはこれらの要件がGCP省令で求められているのである。GCP省令が公布される以前の旧GCPにも同様の記載が既にあった。
第35条には実施医療機関の要件が3項にわたって書いてある。①十分な臨床観察及び試験検査を行う設備及び人員を有していること、②緊急時に被験者に対して必要な措置を講ずることができること、③治験を適正かつ円滑に行うために必要な職員が十分に確保されていること、この3つである。
まず第1項は、必要なデータを収集することを目的とした記載であり、診察室や検査室の他、資料保管や治験薬保管室等の施設設備が整っていることが実施医療機関としての要件となる。第2項は、重篤な有害事象の発生時に迅速かつ適切な治療・処置を行うことを目的とした記載である。そして第3項は、治験を実施するための必要な人員を確保することが目的であり、医師や薬剤師や看護職員などの医療職に限らず、記録の保存等や契約等に係わる事務職員等が必要となる。クリニック等の小規模な医療機関でこれら3項に記載された医療機関の要件を満たすのは難しい。そこで治験施設支援機関(SMO:Site Management Organization)の支援だったり、緊急時に必要な措置を行える医療機関との提携だったりということが必要となる。
GCP省令第36条(実施医療機関の長)
そもそも実施医療機関の長とはなんだろうか。旧GCPマニュアルには「医療機関の長とは、一般的には医療法上の管理者(病院長、診療所長)を指す」と明記されている。GCP省令にはこのような記載はないが、旧GCPと同様の考えであろう。
実施医療機関の長の責務を一言で言うと、治験実施体制を整備する責任ということになる。第36条では実施医療機関の業務手順書を作成するとともに、手順書に従って適正かつ円滑に行われるように必要な措置と、被験者の秘密の保全が担保されるよう必要な措置を講じなければならないと記載されている。また、実施医療機関の長の責務はこの第36条以外にも、第38条に治験事務局の設置、第39条に治験薬管理者の指名、そして第41条には記録毎の記録保存責任者の指名等の条項があり、第36条の他にも治験実施体制の整備に関する条文が散見される。
GCP省令第37条(モニタリング等への協力)
実施医療機関の長は、治験依頼者によるモニタリング、監査並びに治験審査委員会(IRB)及び規制当局による調査を受け入れることが規定されている。モニタリング、監査、あるいは規制当局による調査は一般的に知られているが、IRBによる調査は一般的ではない。しかしGCP上はIRBによる「調査審議」と記載されているように、IRBは調査を行うことができるのだ。
この条文を治験依頼者の目線で見てみると、モニターや監査担当者が直接閲覧(実施医療機関にある資料と症例報告書を閲覧して照合すること)を行える根拠条文といえる。第2項に、実施医療機関の長は求めに応じて第41条第2項各号に掲げる治験に関する記録を閲覧に供しなければならない、と記載されている。GCP省令には記録の保存に関する条項が4か所あると既述したが、そのうちの1つである第41条は実施医療機関が保存しなければならない資料である。つまり、実施医療機関で保存している資料を閲覧に供しなければならない、というように義務付けていることがわかる。さらに、GCP省令第13条は実施医療機関と治験依頼者との契約に関する条文であり、ここにも第41条第2項各号に掲げる記録を閲覧に供する旨を記載した治験の契約を締結しなければならない、と記載されている。このように、実施医療機関の長はモニターや監査担当者には実施医療機関で保存している資料を閲覧に供しなければならない義務がある。
ICH-GCPには実施医療機関の要件について記載されていない。なのになぜJ-GCP(GCP省令)では規定されているのだろうか。実施医療機関の要件をJ-GCPで規定している根拠を見てみよう。医薬品医療機器等法施行規則第40条(承認申請書に添付すべき資料等)第1項のイロハニホヘト。この中でGCPは「ト 臨床試験等の試験成績に関する資料」である。同条第3項に次が規定されている。
「第1項各号に掲げる資料を作成するために必要とされる試験は、試験成績の信頼性を確保するために必要な施設、機器、職員等を有し、かつ、適正に運営管理されていると認められる試験施設等において実施されなければならない」
つまりイロハニホヘトの試験は適切な試験施設で実施されなければならない。例えば「ヘ 急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、遺伝毒性、催奇形性その他の毒性に関する資料」であれば、GLP省令で規定されている試験施設及び機器や職員及び組織等が毒性試験を行う研究所に適用される。同様に「ト」の試験を行う試験施設である実施医療機関にはこれらの要件がGCP省令で求められているのである。GCP省令が公布される以前の旧GCPにも同様の記載が既にあった。
第35条には実施医療機関の要件が3項にわたって書いてある。①十分な臨床観察及び試験検査を行う設備及び人員を有していること、②緊急時に被験者に対して必要な措置を講ずることができること、③治験を適正かつ円滑に行うために必要な職員が十分に確保されていること、この3つである。
まず第1項は、必要なデータを収集することを目的とした記載であり、診察室や検査室の他、資料保管や治験薬保管室等の施設設備が整っていることが実施医療機関としての要件となる。第2項は、重篤な有害事象の発生時に迅速かつ適切な治療・処置を行うことを目的とした記載である。そして第3項は、治験を実施するための必要な人員を確保することが目的であり、医師や薬剤師や看護職員などの医療職に限らず、記録の保存等や契約等に係わる事務職員等が必要となる。クリニック等の小規模な医療機関でこれら3項に記載された医療機関の要件を満たすのは難しい。そこで治験施設支援機関(SMO:Site Management Organization)の支援だったり、緊急時に必要な措置を行える医療機関との提携だったりということが必要となる。
GCP省令第36条(実施医療機関の長)
そもそも実施医療機関の長とはなんだろうか。旧GCPマニュアルには「医療機関の長とは、一般的には医療法上の管理者(病院長、診療所長)を指す」と明記されている。GCP省令にはこのような記載はないが、旧GCPと同様の考えであろう。
実施医療機関の長の責務を一言で言うと、治験実施体制を整備する責任ということになる。第36条では実施医療機関の業務手順書を作成するとともに、手順書に従って適正かつ円滑に行われるように必要な措置と、被験者の秘密の保全が担保されるよう必要な措置を講じなければならないと記載されている。また、実施医療機関の長の責務はこの第36条以外にも、第38条に治験事務局の設置、第39条に治験薬管理者の指名、そして第41条には記録毎の記録保存責任者の指名等の条項があり、第36条の他にも治験実施体制の整備に関する条文が散見される。
GCP省令第37条(モニタリング等への協力)
実施医療機関の長は、治験依頼者によるモニタリング、監査並びに治験審査委員会(IRB)及び規制当局による調査を受け入れることが規定されている。モニタリング、監査、あるいは規制当局による調査は一般的に知られているが、IRBによる調査は一般的ではない。しかしGCP上はIRBによる「調査審議」と記載されているように、IRBは調査を行うことができるのだ。
この条文を治験依頼者の目線で見てみると、モニターや監査担当者が直接閲覧(実施医療機関にある資料と症例報告書を閲覧して照合すること)を行える根拠条文といえる。第2項に、実施医療機関の長は求めに応じて第41条第2項各号に掲げる治験に関する記録を閲覧に供しなければならない、と記載されている。GCP省令には記録の保存に関する条項が4か所あると既述したが、そのうちの1つである第41条は実施医療機関が保存しなければならない資料である。つまり、実施医療機関で保存している資料を閲覧に供しなければならない、というように義務付けていることがわかる。さらに、GCP省令第13条は実施医療機関と治験依頼者との契約に関する条文であり、ここにも第41条第2項各号に掲げる記録を閲覧に供する旨を記載した治験の契約を締結しなければならない、と記載されている。このように、実施医療機関の長はモニターや監査担当者には実施医療機関で保存している資料を閲覧に供しなければならない義務がある。
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