GCP入門【第3回】

2020/03/06 臨床(GCP)

ICH-GCP
 旧GCPの4本柱と、ニュルンベルク綱領からヘルシンキ宣言への繋がりを前回で述べた。いよいよGCPへと話を繋げよう。まずはICH-GCPである。
 ICHは、医薬品規制調和国際会議(International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use)のことであり、1990年に設立された日米EU医薬品規制調和国際会議を基礎として、2015年に新たに法人として設立された組織であることはご存知のとおりである。さらに、ICHの審議は、医薬品の品質(Quality)、安全性(Safety:非臨床)、有効性(Efficacy:臨床)、複合領域(Multidisciplinary)の4つに分類され、各々がさらに細分化され専門家会議(EWG:Expert Working Group)で検討されている。その検討は、トピックの選定であるStep 1から、ICHとしての最終合意であるStep 4まである。そしてその後Step 4を各国が国内規制に取り入れてStep 5となる。
 ICHではGCPにおける審議を有効性(Efficacy)の6番目、すなわちICH E6として検討していることから、ICH E6をICH-GCPと呼んでいる。

 このICH E6は1992 年頃から検討が開始され、Step 4に進んだのが1996年(平成8年)である。これが各極の規制に取り入れてStep 5になったということになるが、このあたりをちょっと詳細に見てみたい。ICH E6は1996年5月1日にICHで承認されStep 4になり、3極(日米EU)の規制当局に採択を推奨することになった。しかし直後に編集上の修正(editorial corrections)があり、同年6月10日にICH E6(R1)として改めて公開された。なお、R1の”R”はrevisionのことである。一般的にICH E6とかICH-GCPと呼んでいたのは、このICH E6(R1)のことである。
 「臨床試験は、ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則、GCP及び適用される規制要件を遵守して行われなければならない」ということがICH-GCPの原則として書かれている。すなわちICH-GCPの倫理に関する精神はヘルシンキ宣言を盛り込んでいることが明らかだ。一方でQualityに関しては「品質システム」の構築とその監査という、明白に「品質保証」のグローバルスタンダードであるISO9000シリーズの影響が垣間見えているのだが、ICH-GCPにはISO9000は明記されていない。

 ICH E6(R1)から十数年経った2013年11月のICH大阪会合においてFDAからAssessment of Clinical Trial Qualityという新規トピックが提案された。これは翌2014年4月に「Clinical Trial Quality に関するAddendum又はQ&A をICH E6(R1)に付録として追加する」旨のDraft Concept Paperが運営委員会で了承された。2015年6月のICH福岡EWG会合でStep 2合意、次いで2016年6月のICHリスボンEWG会合でStep 3合意に、そして2016年11月9日のICH大阪会議でStep 4がサインオフされたのである。これがすなわちICH E6(R2)であり、現行のICH-GCPということになる。このICH E6(R2)の内容については後日紙面を改めて紹介することとして、ICH E6(R1)から日本の規制であるGCP省令に繋ぐ答申GCPへと話を進めよう。

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執筆者について

大場 誠一

経歴

株式会社エスアールディ 信頼性保証室 参与
旧GCP施行当時から国内の製薬企業で試験監査室長としてGCPとGLPの監査を担当。その後の欧州系製薬企業では信頼性保証室長としてGCPとGLPの監査の他、GMPとGPMSPの監査に携わる。そして後の米系CRO(開発業務受託機関)ではQA DirectorとしてGCP監査の責任者。現在は国内CROでGCPと臨床研究の監査、さらにGCP教育やSOPライティングの受託業務を専門としている。またGCPに関連した執筆や多くのセミナーでの講演活動、さらにDVDやe-ラーニングを用いたGCP教育に携わるなど、30年以上にわたってGCPに深く関わり続けている。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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