薬機法改正 変革期か改革期か【第6回】

2021/04/16 医療機器

●要旨
 人口構成による社会構造の変化に新型コロナウイルス感染症が追い討ちをかける中で、人工知能を用いた医療製品などの新しいものの恩恵が得られるような制度が登場しました。制度利用にはブレないビジョンとしっかりとしたコンセプトが必要です。人に寄り添い支え合うことが大切な時代において、テクノロジーの役割をよく考える必要があります。人の営みのために変えるべきこと、変えてはいけないことなど本質を見つめる力が大切です。

●はじめに 構造の変化が起きるときに
 人口構成の変化から、社会構造が変化することは、ずいぶん前から予測されていました。しかし、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の感染拡大の中で、構造の変化が見えただけでなく、私たちは早急な対応を迫られています。何をどう変えていく必要があるのでしょうか。

1 変更計画というもの

 令和元年の薬機法改正によって、先駆的、特定用途といった優れた製品を早く医療現場に送り届ける仕組みがスタートしました。早く届ける仕組みには他にもあります。医療機器の特性を勘案した製造販売承認に関する変更計画制度IDATENはその一つです。医療機器の特性として、進化や現場対応による変更がしばしば生じます。その度に手続きに時間がかかるのであれば、患者さんが恩恵を受けるのは大変です。変更計画の制度は、あらかじめ変更範囲を特定しておくことで、現場へ届けることを早くする仕組みです。

 これを換言しますと、開発計画をしっかり立てなければ、利用できない仕組みです。医療現場をよく観察し、開発計画の中でどのくらいの展開が必要になるかを予見するセンスが必要です。制度に関する当該通知を見ると、新規申請と変わらないくらい、しっかりとした説明が求められていると感じます。しかし、新しい技術には必要な仕掛けです。このような新しい制度は、育てていくことも重要で、相談制度がスタートし、注目に値します。この制度は、医療機器だけでなく、医薬品、再生医療等製品へも広がっていきます。医薬品と人工知能を応用した医療機器の組み合わせ、など、可能性があるでしょう。どれだけ現場を見つめているかが問われています。

 この他、PHOENIXという早期承認の制度の1つがあります。医療機器特有のものの制度で、外科の道具は他でも共有できるように、応用展開を早くする仕組みです。気を配りたいのは、学会の存在です。早く承認する代わりに現場で慎重に観察するということを、よく意識しなければなりません。今の時代らしく、データの紐付けのための手段をうまく活用するなど、質の良い合理的な観察手法が大切です。
 いずれにせよ、ブレないビジョンとしっかりとしたコンセプトを持たなければ、予見をし、計画をしていくことは難しいものです。

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執筆者について

吉川 典子

経歴 特定非営利活動法人医工連携推進機構 客員研究員 医工連携コーディネータ協議会会員
大阪大学大学院薬学研究科博士前期課程にて生物学的人工肝臓をテーマに研究を行った後、製薬会社に入社し、開発企画実務を経験。兵庫県庁薬務課を皮切りに、保健衛生行政に携わる。政策研究などの経験も多い。医療機器センター調査部(PMDAの前身)にて、審査行政に関与。先端医療振興財団にて、振興業務に従事。神戸大学大学院医学研究科にて、プロジェクト支援を行った。また、各地の振興組織、大学研究機関での支援を長年行っており、医療従事者の目線を活かしたコラボ、参入促進や新規性の高い医療技術への支援に強みがある。
デザインに強い関心があり、京都造形芸術大学に在学中。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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