実践! 医薬品開発のプロジェクトマネジメント【第12回・最終回】

2016/04/15 その他

今回は、「番外編」として、これまで積み残してきた研究開発から市販後調査まで様々な事柄を順不同に取り上げる。

● 医薬品開発の仕事
 「2011年度、小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に、小学校入学当時には存在していなかった職業に就くだろう(デューク大学ディビッドソン教授2011)」という未来予想がなされている。「現在(2013年)、人間が行っている47%の仕事が、20年以内に機械によって代行されるだろう(オックスフォード大学オズボーン准教授2013)」というように近いうちにコンピューターや人工知能などの機械に仕事がとられてしまう、という未来予測がされている。
 しかし、医薬品開発は、ヒトという複雑系を対象としているため、全ての疾患のうち内科的・外科的を問わず治療法が確立されているものは1/4に過ぎないと言われている。したがって、少なくとも今世紀中は、研究開発型の製薬企業は十分に生き残りうると考えられる。
 さて、医薬品開発は、基礎研究、非臨床試験、臨床試験(治験)、承認申請、製造販売、市販後調査などのプロセスがあり、とくに臨床試験(治験)や市販後調査については、モニタリング、データマネジメント、統計解析などの業務がある。すでに、データマネジメントや統計解析などのようにコンピューターに依存している業務はあるものの、将来にわたって人間が判断せざるを得ない業務もたくさんあることから十分に生き残りうるであろう。
 さらに、医薬品は、低分子化合物から中・高分子の体構成成分や抗体を始めとする活性ペプチド・タンパクなどの生理活性物質まで、これからの研究開発に大いに期待ができる。

● 医薬品開発の特殊性―期間短縮の困難さ
 治験では、患者に薬剤を投与する回数や投与する期間をガイドラインに従ってプロトコールで規定しており、勝手に変更することはまずできない。必要な症例数も細かく定められているので、予定した患者数が集まらなかった場合やデータに漏れや誤りがあった場合、計画した期間では治験が終わらなくなってしまう。すなわち、他分野のプロジェクトとは異なり、大幅な期間短縮は図り難い。進捗管理やリスク管理を徹底して計画通りの時期に治験を終了し、次のステージに進むことが最善の方法である。

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執筆者について

熊谷 文男

経歴 筑波大学大学院客員教授、慶應義塾大学薬学部非常勤講師、東京薬科大学非常勤講師
1975年 中外製薬(株)入社。研究開発、プロジェクトマネジメント、人財育成などの業務を経験。米国駐在時には、国際開発も担当。国公私立大学、各種学会・セミナー、大手企業での講演や執筆は多数。現役水泳選手及びスキンダイビングインストラクター。製薬企業米国駐在員OB/OG会「アメリカファルマ会」会長、世界の難病の子供たちを救うNPO「荻田修平基金」 理事、就活支援組織「メディカルカレッジ」アドバイザリーボードメンバー、医薬品業界における「社会人基礎力研究会」アドバイザー、幼稚園理事長・園長、総合旅行業務取扱管理者、等。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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