GCP入門【第16回】

2021/04/02 臨床(GCP)

GCP省令第30条(治験審査委員会の審査)
 実施医療機関の長は、当該実施医療機関において治験を行うことの適否について、あらかじめ、治験審査委員会(IRB)の意見を聴かなければならない。治験を行うことの適否ということは言い換えれば治験を開始することの適否であり、いわゆる初回審査を意味している。これに対して2回目以降の審査は「継続審査」といい、次の第31条の条文見出しにもなっている。この初回審査について、実施医療機関の長は2つ以上のIRBの意見を聴くことができるということがガイダンスに記載されてはいるもが、そのような例を私は知らない。
 実施医療機関の長はIRBの設置者と契約を締結しなければならないとされているが、自らIRBを設置した場合と、自らの医療機関を有する法人が設置したIRBの場合は契約締結の必要はない。例えば、大学が2つの附属病院(A, B)を有している場合に、A病院長がB病院IRBに審議を依頼する場合は、同じ大学(法人)なので契約の必要はないが、別の大学病院のIRBに審議依頼する場合は契約が必要となる。
 治験を行うことの適否の判断の前提となる特定の専門的事項を審議させるため必要があると認めるときは、専門的事項について元のIRB以外のIRB(これを専門IRBと呼ぶ)の意見を聴くことができる。ただし、意見を聴くにあたっては、元のIRBの承諾を得なければならず、また専門IRBの意見を参考にしたか否かにかかわらず、元のIRBの意見に基づいて決定することとなっている。この専門IRBが元のIRBと別法人である場合は、上記のように契約を締結する必要がある。

 なお、IRBの意見を「聴く」という言葉を使ってきたが、医薬品GCPでも医療機器GCPでも再生医療等製品GCPでも、あるいは省令でもガイダンスでも、「聞く」という言葉は一切出てこない。一貫して「聴く」である。両者の意味の違いを考えると、必要かつ重要なこだわりであろう。
 


GCP省令第31条(継続審査等)
 第30条は「治験を行うことの適否」、すなわち初回審査の条文であったが、第31条は「治験を継続して行うことの適否」である。つまり継続審査の条文であり、それが必要な場面は大きく分けて5つある(図1)。
 第1項では、治験の期間が1年を越える場合には1年に1回以上のIRB審査を義務付けている。その趣旨は記載されていないが、ガイダンスを見ると、「被験者に対する危険の程度に応じて、少なくとも1年に1回の頻度で治験が適切に実施されているか否かを継続的に審査すること」と記載されていることから、被験者の安全性の確保を目的の一つとしていえる。

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執筆者について

大場 誠一

経歴

株式会社エスアールディ 信頼性保証室 参与
旧GCP施行当時から国内の製薬企業で試験監査室長としてGCPとGLPの監査を担当。その後の欧州系製薬企業では信頼性保証室長としてGCPとGLPの監査の他、GMPとGPMSPの監査に携わる。そして後の米系CRO(開発業務受託機関)ではQA DirectorとしてGCP監査の責任者。現在は国内CROでGCPと臨床研究の監査、さらにGCP教育やSOPライティングの受託業務を専門としている。またGCPに関連した執筆や多くのセミナーでの講演活動、さらにDVDやe-ラーニングを用いたGCP教育に携わるなど、30年以上にわたってGCPに深く関わり続けている。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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コメント

久保田 豊 / 2022/11/29

GCP初学者です。 図1とはどこを見たらよいでしょうか?

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