GCP入門【第15回】

2021/03/05 臨床(GCP)

1月末のGCP省令改正
 先月のGCP入門【第14回】で、昨年末にGCP省令が改正されたことをお伝えしたばかりで、今月もまたお伝えしなければならない。令和3年(2021年)1月29日付で、改正医薬品医療機器等法の施行に伴う関係省令の整備等に関する省令の公布であり、医薬品GCP、医療機器GCP、再生医療等製品GCPが改正された。しかし、医薬品医療機器等法の条番号や項番号が変わったことによる改正だったり、昨年8月の改正の際の積み残し(?)だったりというものであり、それほどインパクトの大きいものではないと思う。

 さて、GCP入門第15回目の話をしよう。治験依頼者による準備や管理の規定であった第二章と第三章が終わり、今回からは治験審査委員会、実施医療機関、そして治験責任医師といった、治験を実施する側の規定である第四章に入っていく。

第四章 治験を行う基準
 この章は治験を実施する人たち、すなわち治験審査委員会や実施医療機関の長、あるいは治験責任医師に関わる条項である。第一節(第27条から第34条)は治験審査委員会、第二節(第35条から第41条)は実施医療機関、第三節(第42条から第49条)は治験責任医師、そして第四節(第50条から第55条)は被験者の同意の4つの節で構成されている。
 

GCP省令第27条(治験審査委員会の設置)
 この条項では治験審査委員会(IRB)の設置者ごとに8つのIRBが書いてある(図1)。治験を実施する医療機関の長はこの8つのIRBのうち、いずれかに審議依頼をしなければならない。この8つのIRBについて歴史を見てみよう。
 旧GCPでは、クリニックのように小規模な医療機関でIRBが設置するのが難しい場合でない限り、自分の医療機関に設置したIRBで審議しなければならないとされており、図1に示す「1.」のみがIRBとして存在した。その後、新GCPになってもしばらくはこの考えは踏襲され、平成18年3月のGCP省令改正においてようやく実施医療機関以外の法人として図1の「2.3.4.」が認められた。
 これについては、さらに遡ること10年ほど前の平成8年11月に開催された第5回GCP特別部会作業部会の議事録には次の記載がある。「IRBは被験者の人権保護等を役割とするものであり、経済的理由等により業務が廃止され支障が生じることのないようにとの観点から、医療機関が設置した治験審査委員会以外の治験審査委員会を認めるにしても、営利を目的としない組織や団体について検討すべきである。」この議論からも分かるように、「2.3.4.」の法人がIRBを設置するためには諸々の要件が必要とされた。

 そして平成20年2月のGCP省令改正でIRBのあり方も大きく変わり、自らの医療機関にIRBを設置しなくてもよく、またIRBを設置していたとしても、他のIRBに審議依頼をしても良いこととなった。さらに図1の「5.6.7.8.」が加わり、図1に示すIRBであればいずれにも審議依頼することが可能となった。ただし、治験の開始から終了まで一貫した審議、すなわち途中でIRBを変えてはいけないという原則がいまだに続いているのは至極当然のことであろう。
 図1の「2.3.4.」に医療法人は含まれていない。平成20年2月にGCP改正案に対するパブリックコメントの結果が開示されおり、これを見ると、医療法人が含まれない理由を尋ねたり、医療法人を含めてほしいとの要望があったりなど、計5件の意見が出されている。しかし当局の回答としては「今後、検討する際の参考とさせていただきます」とか「医療法人は、治験審査委員会の設置者になることはできません」というものであり、質問と答えの合わない、いつもどおりのお役所の回答であった。

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執筆者について

大場 誠一

経歴

株式会社エスアールディ 信頼性保証室 参与
旧GCP施行当時から国内の製薬企業で試験監査室長としてGCPとGLPの監査を担当。その後の欧州系製薬企業では信頼性保証室長としてGCPとGLPの監査の他、GMPとGPMSPの監査に携わる。そして後の米系CRO(開発業務受託機関)ではQA DirectorとしてGCP監査の責任者。現在は国内CROでGCPと臨床研究の監査、さらにGCP教育やSOPライティングの受託業務を専門としている。またGCPに関連した執筆や多くのセミナーでの講演活動、さらにDVDやe-ラーニングを用いたGCP教育に携わるなど、30年以上にわたってGCPに深く関わり続けている。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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