ラボにおけるERESとCSV【第15回】

2016/03/17 施設・設備・エンジニアリング

望月 清

はじめに
連載第12回においてHPLCの試し打ちに対する査察指摘の概要を紹介した。今回は、HPLCの試し打ちに関する直近(2014年、2015年)のFDAウォーニングレターと483(国内)を紹介し、このような指摘を受けないようにするためのMHRA(英国医薬品庁)査察官の提案を紹介する。
 
1. ウォーニングレターにおける指摘の要旨
HPLC試し打ちに関するFDAウォーニングレターの要旨を以下に紹介する。ウォーニングレターの原文へハイパーリンクを張ってあるので、詳細は各ウォーニングレターの原文を参照されたい。
 
(1) 2014/3/6 原薬工場 印度
品質試験および安定性試験を行う前にHPLCの試し打ちが日常的に行われており、この試し打ち慣習を正当化できなかった。
 
(2) 2014/5/7 原薬工場 印度
正式な分析の前に、HPLCの試し分析が行われていた。この試し分析の結果はその後に破棄されていた。この破棄された試し分析は、あるバッチの12ヶ月長期安定性試験の一部として実施されたものであった。QCの管理者は、QCラボの職員が試し打ちを頻繁に行っていたことを認めた。さらに、HPLCを操作するコンピュータにおいて、5,301個のクロマトグラムが削除されていた。削除されたクロマトグラムの多くはバッチの試し打ちであった。
 
(3) 2015/1/9 製剤工場 印度
テスト結果としたHPLC測定の前に、不正な試し測定をQCラボの職員が頻繁に行っていた。管理者はこのことを査察において認め、このようなことは2014年2月に止めたと説明したが、継続していた証拠があった。測定のシーケンス名称はテスト中に度々変更され、繰り返し測定の履歴をトレースしにくくしていた。試し測定のデータはバッチ品質判断においてレビューも検討もされていなかった。例えば:
・ 「テスト」測定データはコンピュータ上の「試し」フォルダーに格納されており、監査証跡がついていなかった。製品サンプルによる「テスト」測定が行われており、それらはOOSとなっていた。バッチリリースの判定を行う際、この「テスト」測定を精査し評価していなかった。
・ 6サンプルのうち2サンプルをHPLCにより試し測定し、試し測定データをPC上の「試し」フォルダーに監査証跡なしで格納していた。バッチリリースの判定を行う際、この「試し」測定を精査し評価していなかった。
上記以外にも、GCやUVの分析において得られたデータが報告されず、また説明されていないことがあった。GCの未報告データはPC上の「試し」フォルダーに格納されていたが、監査証跡はついていなかった。UVの未報告データはUVのハードディスクに格納されていた。報告されず説明されていないこれらのデータは、バッチ品質を評価し製品破棄を判断する時に使われていなかった。

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執筆者について

望月 清

経歴 合同会社エクスプロ・アソシエイツ代表。
1973年山武ハネウエル株式会社(現アズビル)入社。分散型制御システム(DCS)を米国ハネウエル社と分担開発。2002年よりPart 11およびコンピュータ化システムバリデーションのコンサルテーションを大手製薬会社にご提供。2009年より微生物迅速測定装置の啓蒙普及に従事。2014年5月より現職。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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