GCP入門【第13回】

2021/01/08 臨床(GCP)

GCP省令第18条(委嘱の文書の作成)
 少々わかりにくい条文見出しであるが、これは平成24年12月のGCP省令改正によるもので、これ以前は「多施設共同治験」という見出しだった。多施設共同治験とは、一つの治験実施計画書に基づいて複数の実施医療機関で行う治験をいい、それぞれの実施医療機関にはそれぞれ治験責任医師がいる。その場合に、治験実施計画書の解釈その他の治験の細目について複数の実施医療機関の間を調整する業務を行うのが治験調整医師である。治験依頼者が、医師に治験調整医師の業務を委嘱する場合は、委嘱に関する文書を作成しなければならない。だから「委嘱の文書の作成」という見出しが付いた。
 調整業務を1人の医師に委嘱する場合は「治験調整医師」と呼び、複数で構成される場合は「治験調整委員会」と呼ぶ。いずれも委嘱することは必須ではないが、委嘱する場合は業務範囲や手順等を事前に文書、すなわち「委嘱の文書の作成」を行わなければならない。また、治験調整医師や治験調整委員会の構成員は医師又は歯科医師であることがGCP省令で規定されているが、GCPガイダンスでは治験協力者が治験調整委員会の構成員になることも可能としている。
 多施設共同治験であることから、治験調整医師は治験責任医師の中から選定されることが考えられるが、必ずしも治験責任医師に限らない。ということは、治験調整医師と治験責任医師は兼務できる。もちろん実施医療機関の長が治験責任医師になることもあるのだから、これらはすべて兼務できることになる。しかし、これらと医学専門家は兼務できないことをGCP入門【第9回】で説明した。
 医師主導治験では医学専門家を設置する必要がないことも、この【第9回】で説明した。では医師主導治験で治験調整医師や治験調整委員会の設置も必要ないのかというと、これは企業主導治験と同様に、医師主導治験でも治験調整医師や治験調整委員会を委嘱し設置することができる。企業主導治験と同様にと書いたが、実際はGCP省令やガイダンスには出てこない「治験調整事務局」というものを、ARO(Academic Research Organization)やCROに委託して設置していることが多い。なお、AROとは大学や研究機関内に設置された、CROと同様の機能ととらえればよい。

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執筆者について

大場 誠一

経歴

株式会社エスアールディ 信頼性保証室 参与
旧GCP施行当時から国内の製薬企業で試験監査室長としてGCPとGLPの監査を担当。その後の欧州系製薬企業では信頼性保証室長としてGCPとGLPの監査の他、GMPとGPMSPの監査に携わる。そして後の米系CRO(開発業務受託機関)ではQA DirectorとしてGCP監査の責任者。現在は国内CROでGCPと臨床研究の監査、さらにGCP教育やSOPライティングの受託業務を専門としている。またGCPに関連した執筆や多くのセミナーでの講演活動、さらにDVDやe-ラーニングを用いたGCP教育に携わるなど、30年以上にわたってGCPに深く関わり続けている。

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