GCP入門【第8回】

2020/08/07 臨床(GCP)

GCP省令第一章(総則)
GCP省令の第一章は総則であり、第1条から第3条で構成されている。GCP省令に限らず他の法令でも第1条は趣旨か目的、そして第2条は定義という見出しが付いていることが多い。GCP 省令はプレイヤーごとに章立てできていることを前回のGCP入門【第7回】で述べたが、この第一章は「総則」なので特定のプレイヤーに限定された章ではない。

GCP省令第1条(趣旨)
 第1条は「この省令は、被験者の人権の保護、安全の保持及び福祉の向上を図り、治験の科学的な質及び成績の信頼性を確保するため、」という記載で始まるが、この文言はGCP省令が公布された時の平成9年には書いていなかった。平成20年2月の改正で追記されたのだが、その理由として「GCP省令が被験者の人権の保護等を目的とするものであることを再確認し、追加」したとのことである。ここに書いてある「被験者の人権の保護、安全の保持及び福祉の向上」と「治験の科学的な質及び成績の信頼性」の2つを、PMDAは「GCPの二本柱」であるということを、毎年の医薬品・医療機器等GCP/GPSP研修会(平成25年度までは「GCP研修会」と呼称)で説明している。
 第1条は「趣旨」。この条文では医薬品医療機器等法におけるGCP省令の位置付けを述べている。前述の「・・・確保するため」に続く文言として「法第14条第3項(同条第9項及び法第19条の2第5項・・・」という数字が並んでいるが、これを読んだだけで、法における位置付けなんていうことを理解できる人はまず居ないであろう。この条文で言っているのは、医薬品医療機器等法の第14条と第80条の2で定める基準、すなわち、それぞれ「承認審査資料の基準」と「行為の基準」という2つの法的性格に基づいているのがGCP省令だということである。
 法第14条の「承認審査資料の基準」とは、医薬品の製造販売の承認申請書に添付する資料が満たすべき基準である。すなわち、申請を行う者(製薬企業)は承認審査資料として臨床試験の試験成績に関する資料を添付して申請しなければならず、これは厚生労働省令で定める基準に従って収集され、作成された資料でなければならない。また、法第80条の2の「行為の基準」は、治験に関わる当事者(製薬企業、医療機関、医師等)は厚生労働省令で定める基準を遵守しなければならない。これら2つの条文に書いてある「厚生労働省令で定める基準」が、すなわちGCP省令だということを、この第1条は意味している。

 第1条のガイダンスに「治験に関する原則的事項」が記載されている。これを治験の原則と呼んでおり、全部で14項目ある。最初の項目では「治験は、ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則及び本基準を遵守して行うこと」と定められている。ヘルシンキ宣言については過去に何度か説明してきたとおり、治験に限らず臨床試験を実施するに際して最も重要な考えの一つだ。
 ICH-GCPではこれを「ICH-GCPの原則、The Principles of ICH GCP」と呼んでおり、13項目から成り立っている。最初の項目はやはりヘルシンキ宣言で始まり、J-GCP(GCP省令)と全く同じ内容が13項目続くが、14番目は無い。このICH-GCPには無い14番目がJ-GCPにはある。その内容は、「治験に関連して被験者に健康被害が生じた場合には、過失によるものであるか否かを問わず、被験者の損失を適切に補償すること。その際、因果関係の証明等について被験者に負担を課すことがないようにすること」。この文言は、ICH-GCPの日本カスタマイズ版ともいえる答申GCPで既に追記されていた。

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執筆者について

大場 誠一

経歴

株式会社エスアールディ 信頼性保証室 参与
旧GCP施行当時から国内の製薬企業で試験監査室長としてGCPとGLPの監査を担当。その後の欧州系製薬企業では信頼性保証室長としてGCPとGLPの監査の他、GMPとGPMSPの監査に携わる。そして後の米系CRO(開発業務受託機関)ではQA DirectorとしてGCP監査の責任者。現在は国内CROでGCPと臨床研究の監査、さらにGCP教育やSOPライティングの受託業務を専門としている。またGCPに関連した執筆や多くのセミナーでの講演活動、さらにDVDやe-ラーニングを用いたGCP教育に携わるなど、30年以上にわたってGCPに深く関わり続けている。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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