実践! 医薬品開発のプロジェクトマネジメント【第6回】

2015/10/22 その他

 前回、「意思決定」のうちポートフォリオ分析、優先順位付け、組織対応などについて取り上げた。今回からは、「トップダウンとボトムアップ」の使い分けについて紹介する。経営層によって計画され実践に移される「トップダウン」と、現場の社員や担当者が日常業務を通じて行う「ボトムアップ」を企業は使い分けている。全社に及ぶ組織や体制の変更には「トップダウン」が必須である。すなわち、強固なPM体制、PMOの設置、それに伴う人事制度の大幅な改定には「トップダウン」が必要である。それに対し、プロジェクトの進捗管理や開発提案を含む業務改善提案には「ボトムアップ」が必要である。今回からは、両者の違いを考え、この使い分けや必要な技術を確認してみることにする。


 まず、「トップダウン」のプラス面を考えてみよう。経営側の明確な指示がなされるのであれば、業務の内容や時間の効率化が図れることが多い。マイナス面を考えると、現場の組織体制や状況を考慮せず一方的に過大な指示があった場合、社員の業務負荷が増えることも多く、それなりの費用が必要となる。
 このような「トップダウン」では、経営側から現場への背景や意図という、何で行うかの目的を含めた十分な説明、すなわちきちんとした情報伝達が必要となる。強固なPM体制の構築やPMOの設置を考える際には、まず理解を深めるための講演会やワークショップを開催することが有効である。それぞれの企業が置かれている現状に合わせて、実践経験のあるコンサルタントなどに講師やインストラクターを依頼し、各部門のプロジェクトに関わりを持ちそうなスタッフ(部課長)を集めて講演や研修をしてもらう。本格的なPM制度導入時の筆者の経験では、66名のスタッフを集めて講演会を実施したところ、「PM制度が理解できた」97%、「プロジェクト成功に必要な責務が理解できた」92%などであり、その後の制度導入に大きな良い影響を与えた。
 また、仕組みや制度を大きく変更する場合には「トップダウン」と言いながらも、必ず反対勢力が台頭してくる。この反対勢力を敵対視せずに話し合いを続け、納得感を醸成し、支援を得て行くための根回し作業が必要である。重要なのは、反対理由を十分に把握して、あらかじめ対応策を準備しておくことである。行き当たりばったりで対処すれば、反対勢力に言いくるめられたり、言い負けたりする可能性もある。そこで、いくつかの切り口で反対勢力に対する対応策を考えてみたい。

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執筆者について

熊谷 文男

経歴 筑波大学大学院客員教授、慶應義塾大学薬学部非常勤講師、東京薬科大学非常勤講師
1975年 中外製薬(株)入社。研究開発、プロジェクトマネジメント、人財育成などの業務を経験。米国駐在時には、国際開発も担当。国公私立大学、各種学会・セミナー、大手企業での講演や執筆は多数。現役水泳選手及びスキンダイビングインストラクター。製薬企業米国駐在員OB/OG会「アメリカファルマ会」会長、世界の難病の子供たちを救うNPO「荻田修平基金」 理事、就活支援組織「メディカルカレッジ」アドバイザリーボードメンバー、医薬品業界における「社会人基礎力研究会」アドバイザー、幼稚園理事長・園長、総合旅行業務取扱管理者、等。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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