「モノづくりの君へ」【第6回】

2012/09/03 その他

【第6回】
1.モノ事は意識しないままに、必ず軸がブレていく
2.人は間違う、機械は必ず壊れる
3.作業者は仕様書を読まない
4.他人への話は1回に、10%しか伝わらない

 
 前回は「どんな時に生産事故が起きるのか」を述べたが、この回では生産事故が起きないために、実践的局面で、「幹部・管理者として」わきまえておかなければいけないこと即ち、そのことを前提にマネジメントを遂行しなければならないことについて述べる。
 
1.モノ事は意識しないままに、必ず軸がブレていく
 
 前にも述べたが、幹部・管理者にとって仕事とは単なるモノづくりではなく「日々の問題解決の連続」である。
 が、実際のモノづくりは、管理者がやるのではなく、その部下がやってくれるものである。
 管理者は日々起きる不具合を見てそれを解決・改革していくのが仕事である。上位管理者になればなるほど高次且つ複雑な方程式を、"決められた時間内"に解かなければならない。
 このような状況で管理者が気をつけねばならないのは、「モノ事は必ず、知らず知らずのうちに軸がブレていく」ということである。時が経つほどブレていく。時代の"変化"に合わせて意識してブレていくことは問題ないが、"意識しないままに"、ブレてはいけない事がブレていく。
 生産事故だけについてではない。組織も然り、カルチャーも然りである。当初あった姿が、"このぐらいなら大丈夫"という形でだんだんブレていく。パワハラ然り、セクハラ然りである。筆者もこうした形でブレていき、やがて破綻・露見する組織や人の姿を幾度か見てきた。
 毎日毎日、モノをつくり続けていると「機械」も「人」も少しずつ本来の姿からずれていく。その為、出来栄えの製品チェック、中心値管理等で機械のブレや人のブレは発見できるので、管理者はたえずそのデータに注視する事が必要であリ、それが実行されていると思う。
 ところが、即日ブレの結果を得られる事柄ばかりではない。長い時間をかけて、じっくりとボディブローのように結果が出てくる事もある。
 それは「人」である。個人の持っている「カルチャー」と呼べばよいのか、「考え方」あるいは「慣れ」。
 この軸ブレに気付くのは難しい。職場のルールが文書で定められていても、そこにすべてを表現できるわけではない。セクハラ問題然りである。はじめはみんなが分かっていても、そのうちに、知らないままに、このぐらいはいいだろう、このぐらいはいいだろうと少しずつずれていく。
 そういう事をほっておかない「日常の」職場管理が重要であり、ただ留意するだけでなく、たとえば他部門或は社会で起きた事例や事件(セクハラ問題、工場の爆発事故、製品供給事故、安心安全に係る事故など)について、決して他所事と思わないで即その事例を参考に、現場のみんなに投げかけ、討論し、原点に戻って考えて、自分たちは同じような状態ではないのか、社会の常識に合っているか、というように部下や関連部門をたえず刺激し、ブレを矯正しなければならない。
 人が関与する仕事や作業は時を経ると必ず「ブレる」「軸がずれていく」「間違う時がある」
 それを「管理」し、元へもどし、より発展させるのが管理者の仕事でもあり役割でもある。何度もいうが実際のモノ作りはあなたの優秀な部下がやってくれる。貴君の役割は管理することであり、ブレを矯正したり、ブレないしくみを作ることだ。
 これは、「現場」を知らないとできない。しかも現場は毎日発展・変化している。「昔取った杵柄」で処置してはいけない。それには世によく言われる3現である―現場・現物・現実。
 筆者はこれを「現場百回」と習った。いつも3現を見ていることが重要である。
 『現場』にこそ真実があり、銭が埋まっているのである。

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執筆者について

野崎 征彦

経歴 名古屋大学大学院応用物理学修了(ノーベル物理学賞受賞の小林誠氏と同じクラスで学ぶ。もっとも、私は入学後すぐに挫折しましたが…)
日本電気株式会社(NEC)において、半導体部門での約30年間の経験を経て、晴天の霹靂で、大正製薬株式会社へスカウト(?)され、執行役員生産本部長としてモノづくりを担当。複数の工場管理を行う。
「半導体」と「薬」という異業種での経験から、我が国の根幹である製造業の「モノづくり」に共通する危機と精神を強く知る。
現在、モノづくりマネジメントアドバイザーとして活動中。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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