再生医療等製品の品質保証についての雑感【第5回】

2019/09/13 再生医療

水谷 学

はじめに
 前回までは原材料等や工程資材について雑感を述べてきましたので、今後では工程設計についてお話ししたいと思います。ただその前に、本稿では、一般的なGMP適合確認に向けた活動と、再生医療等製品のGCTP適合体制構築に向けた活動におけるギャップについてお話しをします。内容としては、第2回のお話しと重複する部分もありますがご了承ください。


● GMPとGCTPの適合確認では何が異なるのか?
 筆者がセミナーなどで講師をさせていただくとき、よくGCTP適合確認に向けた監査のポイントについて、GMPとの違いを解説してほしいと言われますが、いつもどこから何を説明すべきか困ります。それは、もちろん再生医療等製品の適応が多様性を有する治療であり、患者さんの自己細胞由来製品からマスターセルバンクを有する同種iPS細胞由来製品まで、原材料の管理や、無菌操作環境の維持管理、最終製品の形態、保存温度や使用期限、製品の物流などが製品ごとに異なるため、ケースバイケースの対応が主体であることが理由の1つとなります。例えば、製品(治療方法)によっては、製造方法や工程操作のプロセスバリデーションの計画手順などが十分に確立できていないことが挙げられます。しかしながら、それらはGCTP(GMP)の適合確認の要件がGMPと異なることの説明の根拠ではありません。
 GCTP省令における要件は、実際にGCTP省令の各条(図1)を確認していただければご理解いただけると思いますが、GMP省令との違いはほとんどありません。GCTP省令で新たに追加されたという「品質リスクマネジメント」も、「製品の品質の照査」も、いずれもGMPにおいて新規なものとは言えません。また、ベリフィケーションについても、条文(第14条)には「バリデーションを行うこと」と記されており、あくまでも、やむを得ない理由によりバリデーションを行うことができない場合においてのみ採用が可能な代替措置との位置づけです。すなわち、GCTP省令における監査のポイントは、GMP省令における監査のポイントとほぼ差異は無いものと考えています。

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執筆者について

水谷 学

経歴

大阪大学 大学院工学研究科 講師。
1997年群馬大学大学院工学研究科博士後期課程を中退。国立循環器病センター研究所生体工学部にて生体適合性材料の研究を行った後、株式会社東海メディカルプロダクツにて循環器用カテーテルの開発および製造に関わる。2004年より株式会社セルシードにて再生医療に係る開発および品質保証を担当し、臨床用細胞加工物の工程設計や細胞培養加工施設の設計と運用を実施。東京女子医科大学での細胞シート製造装置開発を経て、2014年より現職。細胞製造システムの開発に従事。工学研究科の細胞製造コトづくり拠点において、細胞製造コトづくり講座(社会人教育)および標準化・規制対応に関わる共同研究を担当。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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