医療機器の生物学的安全性 よもやま話【第60回】
データインテグリティ
前回はデータの信頼性について、信頼性基準とGLPの概要をお話しました。その中で少し触れたデータインテグリティについて話題にさせていただきます。
GMPプラットフォームをご覧になっている皆さまに、データインテグリティのお話をするのは誠におこがましいことで、果たして私のような者が話題にしてよいのかと思いましたが、PMDAのGMP調査はもちろんのこと、何度かFDAのcGMP査察も責任者として対峙してきましたのでそれらの経験を踏まえ、著名な先生方のような高度な専門的立場ではなく、あくまでも現場で悩んで改善してきた者のとしての視点で少し述べたいと思います。
データインテグリティ(Data Integrity, DI)は日本語にはなっていませんので、カタカナで覚えるしかないのですが、データのインテグリティ(誠実、正直、高潔)ということになりますので、完全性や一貫性、正確性などが該当すると教わったかと思います。これを分解し、ALCOA(アルコア)の原則というものがわかりやすくまとめられていますので、念のため下記にお示しいたします。
あまりALCOAになじみのない方は、これをご覧になっても、試験データを扱う上では当たり前のことだろと思われたのではないでしょうか。そうなのです。至極当たり前のことが示されております。
それでは、ラボの日常において、ALCOAの原則に従っているか、いくつか例を挙げてみます。
こんなケースを挙げるとキリがないので、このくらいにさせていただきます。これらはいずれもアウト!とされるようなケースで、ALCOAの原則に抵触するものです。
CASE 1で、このパスワードはキーボードのQの配列を右に6文字入れるだけのもので、11111などと同じように、誰でもが想像できるものです。ということは、なりすましができるということです。Aさんを語ってBさんが記録することができるという脆弱性のあるパスワードで、誰が記録したのかもはやわからないということになります。この他にも、いちいち覚えていられないので、パスワードをシールにメモしてPCに貼り付けることなどは言語道断です。
CASE 2は、これもそのハンコを使えばなりすましができます。ついついハンコを机の上に置いたまま、トイレに行くなどしてしまいがちですが、絶えず身に着けるポーチなどに入れておかないと、置きっぱなしになりますし、帰宅時に鍵のかかるロッカーなどに保管しておかないと問題です。スタンプは欧米にはない文化なので、理解してもらいにくく、面倒でもサインに切り替えた方がよいと思いますが、Japanese cultureとして使う場合は、上述したような工夫が必要です。
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