医療機器の生物学的安全性 よもやま話【第60回】

2024/12/20 医療機器

データインテグリティについて述べたいと思います。

データインテグリティ

 前回はデータの信頼性について、信頼性基準とGLPの概要をお話しました。その中で少し触れたデータインテグリティについて話題にさせていただきます。
 GMPプラットフォームをご覧になっている皆さまに、データインテグリティのお話をするのは誠におこがましいことで、果たして私のような者が話題にしてよいのかと思いましたが、PMDAのGMP調査はもちろんのこと、何度かFDAのcGMP査察も責任者として対峙してきましたのでそれらの経験を踏まえ、著名な先生方のような高度な専門的立場ではなく、あくまでも現場で悩んで改善してきた者のとしての視点で少し述べたいと思います。

 データインテグリティ(Data Integrity, DI)は日本語にはなっていませんので、カタカナで覚えるしかないのですが、データのインテグリティ(誠実、正直、高潔)ということになりますので、完全性や一貫性、正確性などが該当すると教わったかと思います。これを分解し、ALCOA(アルコア)の原則というものがわかりやすくまとめられていますので、念のため下記にお示しいたします。

 あまりALCOAになじみのない方は、これをご覧になっても、試験データを扱う上では当たり前のことだろと思われたのではないでしょうか。そうなのです。至極当たり前のことが示されております。
 それでは、ラボの日常において、ALCOAの原則に従っているか、いくつか例を挙げてみます。

CASE 1: 分析機器の制御PCにログインする自分のパスワードがqwertyだった
CASE 2: サインの替わりに登録した印鑑を用いているが、机の上に置いたままにしていた
CASE 3: 電子データとして記録していたハードディスクが故障したが、バックアップがなかった
CASE 4: 決められた書式のワークシートを試験室に持ち込むのを忘れたので、手の甲に観察結果を記録し、後でワークシートに転記していた
CASE 5: 分析機器の信号をA/D変換してPCに読み込み印刷させると同時に電子ファイルに保存しているシステムで、紙データを記録としていた
CASE 6: 定められた書式のワークシートを用いているが、誰でもブランクワークシートを印刷できる環境だった
CASE 7: 市販ソフトを購入し、それをすぐにデータ処理に用いた
CASE 8: 天秤が故障したので、となりの研究室の天秤を黙って借りて量った


 こんなケースを挙げるとキリがないので、このくらいにさせていただきます。これらはいずれもアウト!とされるようなケースで、ALCOAの原則に抵触するものです。

 CASE 1で、このパスワードはキーボードのQの配列を右に6文字入れるだけのもので、11111などと同じように、誰でもが想像できるものです。ということは、なりすましができるということです。Aさんを語ってBさんが記録することができるという脆弱性のあるパスワードで、誰が記録したのかもはやわからないということになります。この他にも、いちいち覚えていられないので、パスワードをシールにメモしてPCに貼り付けることなどは言語道断です。
 CASE 2は、これもそのハンコを使えばなりすましができます。ついついハンコを机の上に置いたまま、トイレに行くなどしてしまいがちですが、絶えず身に着けるポーチなどに入れておかないと、置きっぱなしになりますし、帰宅時に鍵のかかるロッカーなどに保管しておかないと問題です。スタンプは欧米にはない文化なので、理解してもらいにくく、面倒でもサインに切り替えた方がよいと思いますが、Japanese cultureとして使う場合は、上述したような工夫が必要です。

 

 

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執筆者について

勝田 真一

経歴 一般財団法人日本食品分析センター 理事
1986年財団に入所し、医療機器、医薬品、食品、化粧品及び生活関連物資等の生物学的安全性評価に従事。1997年佐々木研究所研究生として毒性病理学及び発癌病理学研究に携わる。1999年東京農工大学農学部獣医学科産学共同研究員として生殖内分泌学研究。日本毒性病理学会評議員、ISO/TC194国内委員会、ISO/TC194 WG10 Technical ExpertやJIS関連の委員などを歴任。財団では薬事安全性部門を主管し、GMPやGLP対応を主導。情報システム部門担当を歴任。大阪彩都研究所長を経て現在北海道千歳研究所長。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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