ゼロベースからの化粧品の品質管理【第46回】
―化粧品での官能評価を用いた品質保証について―
化粧品GMPに関して、実際の運用面から留意事項についてお話させて頂いています。
今回は、従来のISO 22716を中心とする品質保証に関する話題から少し視点を変えて、化粧品における官能評価についてお話しします。
化粧品は、医薬品とは異なり、肌に優しく、持続的な効果や使用による満足感を提供する製品であることが求められます。美容成分が配合され、肌の健康や外観の改善を目指す一方で、物理的性質だけでは評価しきれない要素も多く含まれています。そのため、化粧品では肌の感触や使用感、外観の変化など、感性に基づく官能評価や目視による検査が必須です。
化粧品の開発や生産においては、各工程で官能による検査や評価が行われており、そのための専門知識が求められます。官能検査は、工程検査における外観や動作の確認、さらにはセンサーや測定器を用いた代替手法の応用にも及びます。
化粧品の品質管理における官能検査は、一部の「官能パネラー」による製品の品質検査として捉えられることが多いですが、実際には製品の企画段階から品質保証の重要な要素として位置づけられます。製品の特性や消費者の期待を理解し、官能評価を組み込むことで、市場での競争力を高めることが可能です。
今回は、化粧品における官能評価の応用について製品の企画段階から品質保証における官能評価の応用についてお話しますが、官能評価は生産工程においても重要な品質管理の項目になっていますので、工程検査における外観検査や動作確認、さらにはセンサーや測定器の活用による代替手法についても、別の機会に詳しくご説明したいと考えています。
そのため、人の五感を用いた官能検査や官能評価が化粧品で行われており、大きく分けて2つの目的で実施されています。
目的1) 測定した結果の判断材料として個々の品物の良品、不良またはロットの合格・不合格の判断を下す。
例えば、原料の受入れ試験では、異種の原料であったり、変質が起きたりしていることをガスクロ分析や微生物試験、赤外線分析等でも確認できますが、標準品との比較で効率的に検査が出来ます。更に、機器測定よりも感度が高いことが多くあり、化粧品の生産工程では各工程においては必須の項目となっています。最終出荷前の製品検査での官能検査に注力しがちですが、GMPの基本である“各工程において高い品質を確保する”仕組みとして官能検査の実施は必須ですので、各工程での関所機能がどのように徹底されているのか、見直す必要があると考えます。
例えば、肌の色ムラやシミをカバーする化粧品においては、分光高度計や画像分析による客観的な評価が行われますが、実際の色ムラやシミ隠しの効果は主観的な評価も欠かせません。製品開発において隠蔽力の向上のみを追求すると、能面のような商品になってしまいます。また、使用感や肌へのなじみ、粉の飛散などの全体的な使用性が損なわれ、結果として購入者の感性に合わない商品になる恐れがあります。そのため、官能評価は専門家や開発者に加えて、一般消費者の視点を反映した評価体制を整えることが重要です。
化粧品では色々な効果効能が求められており、市場では様々なコンセプトの商品が販売されています。主な化粧品で謳われている効果効能は以下の通りです。そして、各社それぞれのコンセプトを打ち出して販売しています。
但し、化粧品の効能・効果を表現、主張する場合には広告宣伝効果にあたり注意が必要です。原則としては、以下のような法的制約があり、注意が必要です。化粧品では、「肌への浸透」、「しわ・たるみを解消する」、「若々しい肌が蘇る」等の表現を目にしますが、使用することはできません。更に、「スリミング」, 「美白」,「育毛」,「ピーリング」,「デトリックス」という表現も、化粧品では医薬品や医薬部外品ではないため使えません。
現在、56項目が詳細に定められています。薬理作用による効能効果を広告したい、効果を認めて欲しい場合には、「化粧品」ではなく、承認が必要な医薬部外品である「薬用化粧品」で申請しなければなりません。更に、「承認された効能効果に一定の条件が付いているもの」は、条件も含めて正確に記載しなければなりません。また、「乾燥による小ジワ」は、適切な試験を行い、効果を確認すること必要で、日本香粧品学会の「化粧品機能評価法ガイドライン」の「新規効能取得のための抗シワ製品評価ガイドライン」に基づく試験、又はそれと同等以上の適切な試験が必要です。
化粧品では直接的な効果効能以外にも嗜好性面への対応が必要で、嗜好性の評価としての官能評価も非常に重要になります。その中で、使用感などの表現はいかに効能効果に言及しないで、商品の魅力を伝えるかが重要になります。インターネットを見ると様々な表現がされていますが、化粧品の公正競争規約(不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第31条第1項の規定)に基づく対応が必要です。
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