【第7回】Pharma4.0と製造現場のデジタル化施策
DI概要とDIアセスメントの取組
本コラムでは、Pharma4.0スマートファクトリーに向けた医薬製造業の課題に対する当社の各種取り組みをご紹介します。大きな基盤づくりの方法論から、各種課題解決ツールまで、幅広くご紹介しますのでご期待ください。
第7回目は、「DI概要とDIアセスメントの取組」と題し、DI要件への対応と弊社の取り組み事例としてDIアセスメントをご紹介します。
1. DI(Data Integrityデータインテグリティ)要件への対応
医薬品製造に関わるデータ、生データの信頼性を脅かす事象がグローバルで発生したことを契機に、2015年以降、Data Integrityに関するガイダンスが発行され、データインテグリティ(以下、DI)要件に対する取り組みが強化されています。
DIは、コンピュータ化システムに限定されたことではなく、また新しい規制要求事項でもありません。GMP下で「記録」の作成と「生データ」の関係性を示す要件として、「紙に手書き」の時代から求められてきた要求事項の一つです。近年、これを満たさない記録やデータが存在すること、コンピュータ付装置が増加したことにより履歴や操作痕跡を見つけやすくなったため、人が無意識に行っていた「当事者には自然なことであっても、第三者視点では行ってはいけないこと(偽造や改ざんにつながる行為)」が顕在化した事象とも言えます。
秤量や検査データは、ALCOA(アルコア)の原則を満たすことが期待されます。(以下の要件の頭文字を取ってALCOAと呼ばれています。)
帰属性(Attributable)
- データを生成した人または検査装置を特定可能なこと
判読性(Legible)
- 人が読んで理解できること
- 時間の変化で劣化しないこと
- 保存年限を通してデータへのアクセスが可能であること
- オリジナルデータとその後の変更が不明瞭でないこと
同時性(Contemporaneous)
- 操作が行われた時に瞬時に記録されること
原本性(Original)
- オリジナルデータは、データの最初の記録であるかもしくは、内容や意味を保存する「真のコピー」であること
正確性(Accurate)
- エラーがないこと
- 修正を文書化せずに編集が行われていないこと
- 事実または基準に適合すること
さらにこれに加えてALCOA+(アルコアプラス)と呼ばれる追加の重要なコンセプトも発表されています。
網羅性(Complete)
- あらゆる反復、または再解析されたものを含むすべてのデータとそのメタデータ
一貫性(Consistent)
- プロセス全体にわたり適切な文書化手順に準拠すること
- 実行順通りの日付、タイムスタンプの適用
永続性(Enduring)
- 保存期間を通じて人の目で読むことができ、その状態を維持できる形式で保存されること
利用可能性(Available)
- 保存期間を通じて、照査等に利用可能であり、監査または査察のために提示可能なこと
これらの要件は、秤量・製造・検査等のデータを生み出すすべての設備・機器・システムが対象となります。これを実現するためには、装置などを操作する手順だけではなく、データ・記録のレビュー/承認プロセス、アクセスの管理、バックアップ、データ保存運用など多岐にわたり、すべてがSOP化される必要があります。
これに基づき組織は、要員に対してDI要件を満たすための教育を実施する必要が生じます。教育の例として装置単位での「オリジナルデータ・True Copyと記録の定義」「記録作成・保管のプロセスの標準作業手順」、組織としてのDI要件順守のための「データインテグリティ教育」などがあげられます。
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