【第11回】デジタルヘルスで切り拓く未来

「治験とデジタルヘルス」


●要旨
 治験を取り巻く環境は大きく変化しています。臨床評価のリバランス時代に、デジタル技術が大きな役割を果たしています。デジタルの環境が大きく進化する中で、患者さんと医療従事者の両方にメリットがあるように工夫を重ねていきましょう。遠隔医療の技術をリモート治験にも導入することや、治験の効率化があります。治験に参加する患者さんを見つめるためにもデジタルについて理解を深めていきたいものです。

●はじめに リバランス時代の治験
 医薬品、医療機器、再生医療等製品においては、臨床評価が重要な役割を果たすことは明白です。製造販売承認を得るために実施するものを治験と呼びます。治験においてもデジタルの波が押し寄せています。もちろん、随分前から紙のケースカードから電子的なケースカードを利用するようになりました。そのためのレコードの決まり事なども制定されています。最近では、審議等のデータもタブレットで表示するようになり、紙があふれる時代ではなくなっています。さらに治験の世界にもリモートが進出しています。
 また、臨床評価のリバランスという仕組みも変化の一つです。今では、患者さんとそのレコードを追っていくのに、デジタルの紐付けを使うことができます。それによって知りたい品目のリアルワールドでの情報を手に入れることは困難ではなくなりました。

<図表> 遠隔治験で叶えられること

1 遠隔治験を支えるテクノロジー
 紙から電子データに移行するには、膨大なデータをどうするかが課題です。さらに、そのデータが役に立つ形になっていることも大切です。昔とは比べ物にならないくらい大容量のデータを気軽に扱うことができるように、デジタルの環境は変わってきています。I T技術者でなくてもクラウドにデータを保管することができます。分かりやすい事例が、スマートホンの機種変更の作業です。有線で手動実施していたバックアップは、自動的にワイヤレスで行えるようになりました。こうしたデジタル生活を支える基盤の発達は医療においても重要です。
 デジタルヘルスでは、単に表示がデジタルになっただけではなく、データが繋がってこそ、と、本コラムでは繰り返し伝えています。血圧等のデータをデジタルデバイスだけでなくサーバーに保管することは珍しくありません。時には、かかりつけ医に提示することもあるでしょう。データがつながること、それが活用できることは、治験においても同じです。患者さんが自宅でデータを取得し、基盤を通じて治験関係者が閲覧し、評価に使っていくことが可能になりました。もちろん、データ取得に際し、オンラインでの診察を受けることも含まれますし、治験看護師が在宅訪問をすることもあります。正しくデータを取得し、送るためのユーザビリティのデザインが必須ですが、治験の景色が変化しつつあります。
 オンラインファーストの医療のスタイルが進めば、もっと多くのデバイスや検査システムが登場することになり、治験においても採用されていくでしょう。

 

 

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