新・医薬品品質保証こぼれ話【第49話】
執筆者の連載をまとめた書籍を発刊「医薬品品質保証のこぼれ話」
“GQP制度の形骸化”と“委託製造の限界”
深刻な医薬品不足が続く中、厚生労働省の要請(2023.3.1)により、改めて、後発医薬品の“承認書(製造販売承認書)と製造・試験の実態の整合性確認に係る自主点検が行われることとなりましたが、これを受けて、3月15日、日薬連(日本製薬団体連合会)は「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」に対し、後発医薬品企業184社(9341品目)を対象とした自主点検に関し、実施手順や完了時期(本年10月)など詳細について説明を行いました。
医薬品不足を招いている最も大きな原因が、後発医薬品の製造所における“承認書不遵守”が原因の違法製造による、“医薬品回収や業務停止命令に拠る生産や出荷の停止”にあると判断され、これまでにも製造所における自主点検が繰り返されてきました。しかし、未だ同様な問題による違法製造があとを絶たないことから、“さらに厳格な自主点検の実施”により問題点の洗い出しを徹底し、再発防止を図る、というのが今回の自主点検の趣旨と考えられます。
自主点検の内容の中心は、“承認書に記載の製造・試験の方法と実際の実施態様の整合性確認(齟齬の有無の確認)”になりますが、ここで重要なことは、単に、発生した“齟齬”を確認するだけでなく、その齟齬が生じた“原因や経緯”を可能なかぎり検証し、これらをセットで自主点検の報告書にとりまとめることではないでしょうか。そうすることにより、改善の方向性も一挙に定まるはずです。
つまり、査察や監査の指摘を受けて初めて原因等を調査・確認するのではなく、“製造所の関係者が主体的に”、齟齬の確認に合わせて原因等の検証を行うという意識の高まりこそが重要であり、今、業界全体に求められているのではないでしょうか。本来、“自主点検”とは“自らが主体的に行う点検“であることを考えると、これは当然のこととも言えるでしょう。
さて、 “齟齬”は多くの場合、“変更管理や逸脱管理”に関連して発生しますが、問題を未然に回避する(予防的対策)という点においては、とりわけ“変更管理”への留意が重要となります。この変更管理を適切・的確に行うためには、“製造業者(製造)と製造販売業者(製販)の連携”が欠かせません。特に、製造方法や試験手順の変更に一部変更承認を要する場合は、所定の薬事手続きが必須であることから、これの必要性を含め、製造や品質管理の現場で生じている事象について、製造業者は製販の担当者(品質保証、薬事)に連絡をとり、事情を詳しく説明し意見を聴くことが大切です。
こういった“製造”と“製販”の“連携”は、2005年の薬事法改正に際しGQP省令(「医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の品質管理の基準に関する省令」)が新設された際、この省令において要件化されています。詳しくは、この改正を機に、医薬品製造に関わる業態が“製造販売業と製造業の二業態制”となり、“この両者の緊密な連携が医薬品の品質確保において極めて重要”との考えから、双方の連絡担当者の設定と、この連絡担当者を通しての変更や逸脱の際の連絡・連携がGQP省令に要件として規定されました。
また、二業態制への移行に伴い、製販が“製造販売承認(承認)の保有者”となり、製販の“医薬品品質への最終責任”が鮮明になったことから、製販には委託先製造所における変更や逸脱に際し、品質が確保されるよう、責任をもって管理・監督・指導を行う義務が生じました。この義務を的確に果たすためには、“委託先製造所から製販への変更や逸脱に関する情報の速やかな共有”が欠かせません。しかし、こういった連絡・連携が、多くのケースにおいて必ずしも円滑になされず、これが、今なお散見される違法製造を含む様々な品質問題を招く、一つの要因になっていると推察されます。
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