【第4回】マイナスからはじめる生物統計学

「統計的検定の仕組み(1) ~「意味の有る差」について考える~」

1.    意味の無い差とは??
 先日風邪をひいてしまい、風邪薬を飲もうとしたところ切らしておりました。自宅には他の風邪薬もあったのですが、どうしても自分に合っている(と思っている?)薬をわざわざ買い求めに行きました。同じ風邪薬でも自分に合う/会わない…のような、決して明確ではないにしても何か基準のようなものをお持ちの方も、実はそれなりにいらっしゃるのではないでしょうか?風邪薬はたくさんあるのに、何故か○○社の××でないとダメだとか、△△は自分に合わない、他の家族と違うだとか…?
 風邪薬のCMをTVで見かけることも多いと思いますが、メーカーはどんなに製品に自信があっても「必ず効きます」「絶対に効きます」のような強い表現をしません。その理由は、しないのでは無く「医薬品医療機器等法(旧薬事法)」により表現が許されていない、つまり出来ないことが理由です。どのような医薬品にも個人差があるため、必ず、絶対、100%などといった強い表現が禁じられていることに他なりません。健康食品のCMにおいて、画面片隅に小さく「効果には個人差があります」という表示がなされるのも、同様に法律の定めがあるから仕方なくやっているわけです。小さく表示されるのは、もちろん目立たせたくないからに他ならないわけですが…。
 その風邪薬は、私にとっては過去に効果があったということに他なりませんが、その効果は単なる一個人の経験則に過ぎません。偶然自身に効果があったからと言って、それが全ての人に当てはまるわけではありません。それこそ同じ一個人であっても、その日の体調や状態、その他の要因(食べたものなど)により効果は大きく異なってくることも多いかと思います。全く同じ条件で服用しているにも関わらず、「この前は効いたけど、今回は効かなかった」のような場合は、医学研究においては効果があるとは言えません。医学研究も科学の一分野ですので、大切な原則の一つである「再現性」が認められないことになります。たまたま、偶然、個人差、誤差…表現の差こそあれども、これらは全て「意味の無い差」であると見なされます。通常、意味の無い差はごく小さな差であることが多い*です。

*ごく小さな差のはずなのに、何故か「有意差アリ」の判定をされてしまうこともあります。その逆もありますが、連載の進捗に合わせて説明させて頂きます
 


 

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