【第3回】マイナスからはじめる生物統計学

「医学・生物統計学の最恐兵器 ~統計的検定とは?~」

1.    検定とは?
 検定について簡単に調べてみると、下記のような説明がありました。

① 製品やサービスなどを、法律や業界の定めた基準に即して検品し、その合否や等級を認定すること(例:JIS、JAS、教科書検定など)
② 特定の資格に必要な技術や学力を検査し、その合否や等級を認定する。特定の業務に携わるために不可欠(医師、看護師、弁護士、気象予報士)
③ 特定の業務を遂行する上でその従業者のスキルを図るもの(例:統計検定、英語検定、漢字検定)
④ 推計統計学における仮説検定(例:t検定)
(以上、Wikipediaより)
 

 医師や弁護士の場合は試験と呼ばれることが多いようですが、①から③に関しましては全てに共通して、一定の合格基準が存在します。例えば、教科書には検定委員なる人々が存在し、仮に内容に問題があるとされれば教科書会社が指摘を受けるというのは、TVのニュースなどでおなじみの光景です。医師や弁護士など資格を伴うもの、英語や漢字などのスキルを確認するものでは、基準点に達していれば合格、そうでなければ不合格となります*。上記を簡単に分類してしまえば、得点化されるものが「試験」、そうでないものが「検定」と呼ばれているようです(意図があるか無いかは別ですが)。どうやら検定とは、得点化の有無や試験と呼ばれるかどうかはさておき、いずれにしてもある種の「基準」が存在し、その基準に達しているかどうかを確認するものであることは共通のようです。

*医師や看護師などは受験資格がそれぞれ「医学部」「看護学部」卒業者に限られますので、基準得点だけのお話ではありません

2.    推測統計学における仮説検定とは?
 前回、第2回の連載の最後で用いた「統計的検定」という用語は、上記④「推測統計学」における「仮説検定」を短く語ったモノになります。順次説明させていただきますと…
 推測統計学とは、標本と母集団に基づいた統計学のお話です。もちろん、対象の全て(=母集団)を調べることが出来れば推測する必要はありませんが、そのためには時間もお金もかかります。全数調査の代表、国勢調査が5年に1度なのはそのような理由もあります。そもそも、医学研究の母集団は「生物学的ヒト」です。新しい医薬品や治療法はサンプル(=被験者)だけではない、今後産まれてくる人々も含め、人類の全ての人々に効果があることが期待されます。母集団には現在存在する人々だけではない、今後産まれてくる人々をも含んでおりますので、そもそも全てを調べることは不可能なのです。それゆえ、標本(サンプル)を調べることによって全体(母集団)を推測する必要があるのですが、第2回の電話調査の事例のようにサンプルが偏っていると、全体を推測することが不可能になります。社会調査法において、それこそサンプリングの方法だけでも複数の学問体系が出来てしまうほど、実は重要かつ難解なものであり、何となく数だけを集めて何となく電話する相手を選んで実施できるほど社会調査は簡単ではありません。医学/生物統計学においても、適切な標本の抽出方法については、社会調査法同様に大きな研究テーマになっております。
 仮説検定とは、読んで字の如く仮説の正しさについて検定を行うことです。そもそも仮説とは、「現段階で正しいか否かは定かでは無いが、おそらく○○は××である」など、自身の疑問や問題意識のことです。全ての研究はこのような疑問や問題意識を設定することから始まるので、これが無ければ始まりません。つまり、自身の疑問や問題意識の正しさ(誤り?)について検定することが「仮説検定」です。
 ではその「仮説検定」に必要な基準とは何でしょうか?
 


 

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