医薬品の外観目視検査における要求品質の明確化のために【第34回】

2023/10/13 品質システム

外観検査に関するQ&A集(パート1)。

~外観検査に関するQ&A集(パート1)~


1.外観検査に関するQ&A集(パート1)
 これまで、外観検査に関するセミナーを多数担当しており、受講者から多くの質問を頂いている。それらをQ&Aとして、以下にまとめたので参考にしてほしい。いずれも複数回質問を頂いたものであり、多くの方の職場においても参考になる事例であろう。但し、私見の部分も含まれるので、あくまで参考とし自社でのルール作成に役立てて下さい。
 

Q1:微細粒子(異物)が目視確認されるまでの成長過程について
A1:個々の事例で状況は異なると思うが・・・。
一般論として、タンパク質、ペプチド等、内因性の異物については、pH変動等により凝集を起こし、浮遊物、沈殿として見えてくることがある。
製造(充填)直後に微粒子が浮遊していて、時間経過で沈殿し見えてくることがある。また、イオン的に凝集して可視化することもある。
 
Q2:注射製剤の異物判定としては日局試験(不溶性異物試験と不溶性微粒子試験)「適」が最低ラインと考えて良いでしょうか、他に考慮するファクターは有るでしょうか.
A2:基本的には、日局準拠が基本ですが、不溶性異物試験は、判定基準が明確ではないので、自社基準、限度見本の設定が重要となる。
検査員が、上記基準以内であっても不良排除することがあります。これをどう扱うかを決めておく必要がある。
 ・基準内なので合格品とする?
 ・検査員が不合格判定したものは不合格とする?
 
Q3:直接容器等に起因する異物生成は比較的多いでしょうか
A3:GMP管理下にない容器等の製造業者では、異物に対する認識が低いことがある。個別に指導していくしかない。容器等由来の異物のライブラリを作成し、繰り返し自社要求レベルに合わせた改善を求めることが重要。コストアップを要求されることがあると思うが、異物リスクとのバランスで。最終的には、容器等については、自社洗浄にて異物除去を担保するしかないのではないか。輸入資材については、更に異物に対する認識が異なるので、受入時に十分に確認が必要。表面キズについても注意が必要。
 
Q4:目視検査教育試験時の検出率について
一般的には200μmは100%、100μmは70%の検出率といわれているが、目視検査教育試験として実施する場合、200μm:100%のみ又は100μm:70%のみの検出基準でも問題ないか。重要な検出基準はどこに合わせるべきか。
A4:70%の検出率(見逃しを前提とした)のみでは不十分であり、200μm:100%との併用が望ましい。
200μm:100%は、最低要件であり、検査員特性を評価するためにも、100μm:70%を併用することは有意義である。
 
Q5:内溶液によって検出時間は大きく変わるのか(弊社:黄色~黄褐色透明、粘度が高い)
検査時間として白・黒バックで5秒ずつとなっているが、検査時間にあわせていくように教育を行うのがよいか、検査者が確実に検出できる時間を検討し検査時間を規定していくのがよいのか。
A5:異物に対する認識が国により大きく異なる(日本は厳しい)ので、一律に時間を規定し、その時間内で検出できるものを排除すればよいという考え方は、実情に合わないのではないか。ただし、長い時間をかければよいということではなく、容器、形状、容量、溶液色、液性などにより、認定された検査員の標準的な検査時間を設定することがよいと考える。
 
Q6:異物サンプル作成については独自の手順にて行っているが、異物サンプルの作成方法についての注意点。(異物の材質等、たとえば金属を使用する場合、アルミなどは浮いてしまう)
A6:これまでに検出されている異物/材質、サイズ、色を考慮。製品中に混入する可能性のある(接液部材)材質を考慮。
 
Q7:作成した異物サンプルの有効性を確認する者の資格、教育はどのようにするべきか。
A7:実際に確認するのは、管理者の指示を受け、ベテラン検査員でよい。異物サンプルの承認(有効性)は、品質部門責任者のサイン、日付を明記し、使用期限を設定すること。
 
Q8:目休め時間の妥当時間はどれくらいか
A8:適切な検査ができることが前提。各社各様。30~60分に1回、5分程度の目休めが一般的か。20分に1回5分の休憩を推奨する例もある。EUでは、60分の検査は長すぎるとのコメントもある。
 
Q9:目視検査従事者に年齢制限はあるか。
A9:年齢で制限する必要はないが、健康診断、視力検査、認定更新時の評価等で適切な検査ができなければ、認定更新しないのが一般的。
 
 

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執筆者について

新井 一彦

経歴 C&J 代表
化学系企業にてバイオテクノロジーを利用した医薬品の探索、開発研究に従事。その後、開発医薬品(無菌製剤)の製造工場立上げに製造管理者として関わりGMP組織体制、基本構想を構築した。
平成17年の改正薬事法完全施行に合わせ、新たに製造販売業を取得するため某ジェネリックメーカーの設立に関与。取締役信頼性保証本部長として総括製造販売責任者の責務を担った。
現在、C&J 代表として、講演、執筆、国内外のGMPコンサル業務活動を推進。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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