いまさら人には聞けない!微生物のお話【第50回】

2023/10/13 その他

(APPENDIX)個人防護具と無害化処理とスタンダードプレコーションについて

1.    個人防護具
個人防護具(Personal Protective Equipment:PPE)は感染防止の方法の一つである「感染経路の遮断」のために使われる道具です。

最近COVID-19患者を受け入れている病院の様子がテレビ番組やネット上でしばしば紹介されています。使い捨てのガウンの上にプラスチックエプロンを着用し、グローブ、キャップ、N95マスク、ゴーグル、さらにフェイスシールドを装着しています。これらが個人防護具PPEです。

本稿では、主としてリスクレベル1または2の微生物を対象に、微生物の管理や滅菌について論じてきました。リスクレベルの低い微生物を扱う一般の微生物ラボでは、通常は命にかかわるような感染事故は考えられませんので、COVID-19病棟のようなPPEまでは必要とはされません。しかし感染事故があり得ない、というわけではありません。一般的な微生物ラボで考慮しなければならない感染は、傷口や粘膜からの感染です。リスクレベル2以下の微生物は、病原性はありますが、限定的でその予防や治療法も確立されているため、仮に感染事故が起こっても重篤な状態になる危険性はほとんどありません。従いまして一般の微生物ラボでは、試験衣(ラボガウン、白衣)、グローブ、マスク、保護メガネなどが標準的なPPEとなります。ただしエアゾールが発生するような試験を実施する場合は、呼吸器感染が考えられますので、相応の対策が必要です。なお医療機器企業で、医療機関から返送されてきた苦情品の無害化処理を行う場合には、肝炎やエイズなどの血液を介した感染症の危険性がありますので、使い捨てのガウンに加えて、ゴーグルかフェイスシールドの着用が望まれます。
また感染の防止ではありませんが、エチレンオキサイド滅菌に携わる作業者は、滅菌後の製品の搬出やボンベの交換時などエチレンオキサイドに接触する際には、専用のガスマスク、手袋、ゴーグルなどの着用が必要です。

PPEの着用は作業者にとってたいへん煩わしいものですが、安全な作業のためには絶対に必要なものです。

 

 

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執筆者について

古谷 辰雄

経歴

株式会社シーエムプラス GMP Platform シニアコンサルタント
ジョンソン・エンド・ジョンソン、クリエートメディック、ボストン・サイエンティフックにて、滅菌管理、微生物管理、品質保証業務を経験した後、2013年に(株)シーエムプラス入社。
医療機器メーカー在籍当時、エチレンオキサイド滅菌のスペシャリストとして厚生科学研究班、各種滅菌関連委員会に参画。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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