【第12回】GCP-SOPライティング - GCPで必要なSOPと作成技法 -

 治験依頼者がGCP省令に基づいて作成しなければならないSOP、そしてGCPで求められてはいないが作成する必要のあるSOPについて前回まで紹介してきた。今回は治験依頼者ではなく、実施医療機関と治験審査委員会、さらにSMOとCROに必要なSOPについて紹介しよう。


実施医療機関のSOP
 実施医療機関の長と治験審査委員会(IRB)の設置者が作成しなければならないSOPについてGCP省令第36条(実施医療機関の長)に規定されており、実施医療機関の長は治験に係る業務に関するSOPを作成することが定められている(図1)。「治験に係る業務」と書いてあるが、もちろん「治験の依頼」や「治験の管理」に係る業務に関するSOPは治験依頼者が作成するものなので、実施医療機関の長が作成しなければならない「治験に係る業務」のSOPというのは厳密にいうと、GCP省令第四章の「治験を行う」業務のSOPということになる。
 実施医療機関の長が作成するSOPは、実施医療機関ごとに作成されているべきであり、例えば一つのSMOが複数の実施医療機関を支援しているから全ての実施医療機関で共通のSOPで良いということではない。もちろんSOPの記載内容はほぼ同じでも良いのだが、あくまでもそれぞれの実施医療機関のSOPとして制定されていなければならない。
 SOPは「個々の治験ごとに作成する必要はなく、治験に係る業務が恒常的に又は均質にかつ適正に実施されるよう標準的な手順を定めたものであること」が第36条第1項のガイダンスに記載されている。この「恒常的」と「均質」さらに「適正」というワードがまさにSOPが意味するところである。
 SOPには、実施医療機関の長が適切なIRBを選択する手順を定めておかなければならない(図1)。もちろん複数のIRBの中から選択せずに常に自身の実施医療機関内に設置したIRBを使うことでもよいのだが、その場合はその旨がSOPに記載されている必要がある。


IRBのSOP
 IRBの設置者はIRBの手続きに関する手順書を作成することをGCP省令第28条(治験審査委員会の構成等)で求めている(図1)。つまり、会議の成立要件だったり、審査対象資料だったり、承認や却下等の審議結果などについて規定することになる。第28条では、IRBの会議の記録(一般には「IRB議事録」と呼んでいる)をIRBの設置者(病院長である場合が多い)が作成することが規定されている。しかし通常はIRB事務局が作成してIRB委員長が承認することが多い。会議の記録を誰が作成し、誰が承認するのかという手順をSOPに定めておこう。
 IRB委員はヘルシンキ宣言や医薬品医療機器等法などの法令及び行政通知等の内容を理解していること、とGCP省令第28条第1項のガイダンスで求めている。しかしPhⅠの専門施設以外の実施医療機関ではIRB委員の教育訓練記録を作成しているIRBは少ない。やはり教育訓練を実施する手順及びその記録を保存することを定めておく必要がある。
 

SMOのSOP
 GCP省令で治験施設支援機関、いわゆるSMO(Site Management Organization)に作成を明確に求めているのは補償の手順だけである。第39条の2(業務の委託等)のガイダンスで「実施医療機関とともに、当該受託業務により生じた健康被害に要する費用その他の損失を補償するための手順を定め、当該手順書に従って健康被害の補償に関する業務を実施すること」と記載されている(図1)。CROに関する条文である第12条(業務の委託)にも同様の文言が記載されており、ここではCROと同様の手順がSMOにも求められている。簡単にいうと、治験依頼者に求められている保険等の補償措置を義務付けているのではなく、補償が必要な健康被害が生じた場合の報告等の手順を記載することになる。

 

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