医薬品の外観目視検査における要求品質の明確化のために【第33回】

2023/09/08 品質システム

製造委託先の異物管理について。

~製造委託先の異物管理(国内外)~

1.委託先管理の重要性
 異物判定基準の設定については、各社、各国で異物に関する認識が大きく異なるため、異物に関する自社基準と委託先基準の比較することが重要である。これらの不整合により、トラブルになることがあるため、異物サイズ基準だけでなく、容器の傷やラベル・包装等は、どこまで日本品質を要求するかを明確にしておく必要がある。

1.1 委託先との取決め
 受入検査(原料・資材の他、委託製造製剤も含め)では、あらかじめ相手先(供給元)との取決めを行うことで供給開始後のトラブルを防止できる。
 色見本、標準見本、限度見本等を活用することが両者合意しやすい。尚、色見本、標準見本、限度見本は、時間とともに変化するものであり、それぞれの作製日(承認日)、承認者を明記した取決め書を交わし、定期的に更新しなければならない。
取決め内容に基づき、タイムリーな確認(不良現品)や監査時の環境・検査実務確認、検査業務の研修受け入れ等により、コミュニケーションルートを確保しておくことも重要である。

1.1.1  AQL(Acceptable Quality Level)に基づく取決め 
 AQLとは、第23回でも紹介した合格品質水準の意味である。 工程平均として十分だと考えられる不良率の上限や、合格することのできる最低限の品質を指す。 AQL の基本は工程内で品質を作りこみ、不良は作らないという思考に立脚している。Acceptable とは受入れ可能を指し、購入者が合格品質水準を満たしたと判定して受け入れて購入に至る事を意味する。 
 海外製造委託先との取引では必ず AQL の値をいくらにするかの交渉になる。虫・毛髪は絶対ダメと海外メーカーに言ってもそれは通じない。AQLの値をいくらにするかとの話し合いになり、それを取引規格に設定することになる。致命的な欠陥、重要な欠陥、軽微な欠陥でそれぞれAQL を設定する。致命的な欠陥(0.01%)、重要な欠陥(0.1%)、軽微な欠陥(1%)など。それぞれに欠陥の定義を定め、必要により写真あるいは実物を用意してお互いに取り交わすことになる。

1.2 委託先製造所のGMP監査による確認
 委託先の異物対策状況を実地の監査で確認することは有効である。
どのようなタイミングで実地監査を実施するかをまとめた。

〇製造委託先選定時
〇初回製造時
〇定期的確認
〇異物不良多発時(受入検査、医療機関からのクレーム)

 

 

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執筆者について

新井 一彦

経歴 C&J 代表
化学系企業にてバイオテクノロジーを利用した医薬品の探索、開発研究に従事。その後、開発医薬品(無菌製剤)の製造工場立上げに製造管理者として関わりGMP組織体制、基本構想を構築した。
平成17年の改正薬事法完全施行に合わせ、新たに製造販売業を取得するため某ジェネリックメーカーの設立に関与。取締役信頼性保証本部長として総括製造販売責任者の責務を担った。
現在、C&J 代表として、講演、執筆、国内外のGMPコンサル業務活動を推進。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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