いまさら人には聞けない!微生物のお話【第47回】

2023/08/18 その他

APPENDIXとして、感染について。

【APPENDIX】  微生物感染と感染防止

筆者は医師ではありませんし、感染症の専門家でもありません。そのため感染症全般に関する詳細な解説を書くことはできません。加えてCOVID-19が社会問題になって以降、感染、免疫、ワクチンなどという用語は日々耳にするようになりました。テレビでは毎日のように、それらのテーマが専門家により解説されています。そのため今更取り上げるまでもないと思いますが、微生物に携わる者の教養として、感染、感染防止、免疫、ワクチンなどの基本的な概念は知っておく方がいいと思います。そこでAPPENDIXとして、感染について、教養レベルの話題に限定して紹介いたします。専門的なことは他の専門書やWebサイトを参照してください。

1.    微生物に起因する病気
微生物のコントロールの項でも書きましたが、微生物の中には人に対して感染を引き起こすもの、いわゆる病原体があります。たとえば昨今世界的にクローズアップされている新型コロナウイルスはじめ、インフルエンザウイルス、コレラ菌、赤痢菌、破傷風菌、肝炎ウイルスなど数え上げたらきりがありません。

“COVID-19” と ”SARS-CoV-2”
2020年初頭より「コロナウイルス」による感染が世界的に拡大します。多くのメディアで日々様々な情報が飛び交い、明らかに情報過多の状況になっています。

そもそもコロナウイルスとは、ウイルスの一種で、それ自体は古くから知られていました。通常の風邪(カゼ)の多くはコロナウイルスが原因とされています。国立感染症研究所によると、コロナウイルスには人類に広く蔓延している4種類と、動物から感染した重症肺炎ウイルス2種類が知られており、加えて2019年に発生した新型コロナウイルスがあるとの紹介があります。

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/9303-coronavirus.html

ここ数年来一般的に使われている「コロナウイルス」は、言うまでもなく「新型コロナウイルス」を意味しています。その病原体は “SARS-CoV-2” というウイルスで、このウイルスに感染して発症した病気が「新型コロナウイルス感染症」で、これをCOVID-19 と言います。世界保健機関(World Health Organization: WHO)は2020年1月にCOVID-19に関して、緊急事態である旨の宣言を行い、そして2023年5月5日にこの緊急事態の終了を宣言しました。この間の感染者は、約7億6500万人で、うちおよそ692万人がCOVID-19で死亡したとされています。


「感染」というのは、病原性を持つウイルスや細菌などが人、動物、植物などの生物に接触・侵入し、その体内で定着・増殖することをいいます。その結果として、感染された相手(「宿主(しゅくしゅ)」といいます)の健康状態に異変を生じることを発病または発症といい、その病気を感染症といいます。

感染が成立するには、次の3つの要素が必要です。
 ①    感染の原因となる細菌、ウイルスなどの病原体が存在すること
 ②    感染の経路が存在すること
 ③    宿主がその病原体に対して感受性を有すること
この3要素が揃うことによって「感染」が成立します。 (図1)

ただし病原体が体内に侵入しても、必ずしも病気を発症するとは限りません。感染から発病に至る過程では、上述の3要素のほかに体に入った病原体の量(菌量)および宿主の抵抗力が重要にファクターになります。 たとえ病原体が体内に侵入しても、それが少量であり、宿主が健康体(免疫機能や体の栄養状態が正常)であれば、多くの場合発病には至らず、病原体は体外に排出されます。逆に体力のない高齢者やAIDSなどの別の疾患によって免疫機能不全を起こしているような場合には、通常は無害な微生物(非病原菌)によっても、感染・発病を引き起こす場合があります。

感染症の原因となる微生物には、細菌、ウイルス、真菌、リケッチア、マイコプラズマなど様々なものが知られています。病原微生物学のテキストを見ますと、非常に多くの病原菌が紹介されています。たとえば細菌ではコレラ菌、炭疽(たんそ)菌、野兎(やと)病菌、病原性大腸菌、黄色ブドウ球菌(MRSAを含む)、レンサ球菌、腸球菌(VREを含む)、ヘリコバクター、ペスト菌、結核菌、赤痢菌、チフス菌、破傷風菌、ボツリヌス菌、梅毒トレポネマ、ピロリ菌、淋菌、レジオネラ菌、虫歯菌などなど。ウイルスでは、後天性免疫不全症候群ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、インフルエンザウイルス、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)、重症急性呼吸器症候群 (SARS) ウイルス、成人T細胞性白血病ウイルス、エボラ出血熱ウイルス、黄熱ウイルス、狂犬病ウイルス、サイトメガロウイルス、進行性多巣性白質脳症ウイルス、水痘ウイルス、帯状疱疹ウイルス、デング熱ウイルス、天然痘ウイルス、風疹ウイルス、急性灰白髄炎(ポリオウイルス)、麻疹ウイルス、ハンタウイルス、ラッサ熱ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、ノロウイルス などなど。そのほかにも実に多くの病原体が知られています。

人類は古代から感染症と闘い続けてきました。 そして19世紀以降、微生物学の知識の増大、消毒の重要性の認識、ワクチンの発明、抗生物質の発見など医学上の様々な重要な出来事があり、その結果現在では多くの感染症が克服されてきました。しかし感染症の研究が進んだとはいえ、現在でも世界中で非常に多くの感染症患者が発生しています。従来、後天性免疫不全症候群(AIDS)、結核、マラリアが三大感染症と呼ばれており、たいへん大きな問題となっていましたが、上述のCOVID-19は、既にそれら以上の大きな脅威になっています。

今後とも微生物と人類の戦いは永遠に続いていくと思われます。

 

 

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執筆者について

古谷 辰雄

経歴

株式会社シーエムプラス GMP Platform シニアコンサルタント
ジョンソン・エンド・ジョンソン、クリエートメディック、ボストン・サイエンティフックにて、滅菌管理、微生物管理、品質保証業務を経験した後、2013年に(株)シーエムプラス入社。
医療機器メーカー在籍当時、エチレンオキサイド滅菌のスペシャリストとして厚生科学研究班、各種滅菌関連委員会に参画。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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