いまさら人には聞けない!微生物のお話【第43回】
20. エンドトキシン試験
血液に接触する医療機器や注射剤などでは、発熱性物質の混入を厳しく管理することが求められます。そして製品に混入する可能性のある発熱性物質の中で、最も注意すべき物質が「エンドトキシン」です。
エンドトキシンは内毒素ともいわれ、その本体は大腸菌や緑膿菌などのグラム陰性細菌の細胞壁(外膜)を構成するリポ多糖(Lipopolysaccharide : LPS)です。(図20参照)
エンドトキシン(LPS)には次の特徴があります。
- エンドトキシンは、2万~数百万の分子量を持つ高分子複合体である。
- エンドトキシンの生物活性の本体は、「リピドA」と呼ばれるLPSの脂質部分である。
- エンドトキシンの多糖部分は親水性、脂質部分は疎水性である。そのため水溶液中のエンドトキシンは糖部分を外側、脂質部を内側にしたミセル状態である。
- エンドトキシンはマイナス荷電を示すリン酸基を持つため、マイナスの電荷を帯びている
- ヒトに対する発熱性は、体重1㎏あたり1ng(ナノグラム=10-9グラム)ほどである
- エンドトキシンは耐熱性である。一般にエンドトキシンの熱による不活化には、250℃で30分以上の乾熱処理が必要である。
「ヘルスケア製品の滅菌及び滅菌保証」より一部改変して引用
エンドトキシンはすべてのグラム陰性細菌に存在します。そしてグラム陰性菌は、環境中、特に水環境に多く存在します。細胞(グラム陰性菌)が死滅あるいは溶解した時に菌体外へ溶出します。それが製品に残留すると、エンドトキシン汚染となります。つまりエンドトキシン汚染が、いつでも、どこでも、極めて容易に起こり得る、と言うことができます。
加えてエンドトキシンはグラム陰性菌の外膜(細胞壁)であり、その本来の目的は外部の攻撃から菌体を守るためのものであるため、エンドトキシン自体、きわめて安定した物質です。そのため熱に対しても非常に安定で、通常の滅菌工程では不活化されません。これを不活化するには250℃での乾熱滅菌が必要と言われているため、無菌製剤のガラスバイアルなどは、250℃以上で処理を行うのが一般的です。
エンドトキシンを除去するには、物理的に除去するか、何らかの方法で不活化する必要があります。一般的な方法は次の通りです。
これらの手法はもちろん有効ですが、特殊なケースを除いて、最終製品としての医療機器には、どれも適用できません。そのためエンドトキシンの限度値がある医療機器を製造する場合は、「可能な限り微生物が存在しない製造環境で製造を行うことでエンドトキシン汚染を最小限にすること」が必要になります。
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