ベトナム医薬品・医療機器分野への進出に関する法規制【第2回】

1 医薬品分野の外資規制
 医薬品分野の外資規制について、前回の連載では、1)ベトナム国内に製造拠点を設けることができるか、2)ベトナム国外で製造した製品を自社が輸入元となってベトナムに輸入することができるか、という点について検討しました。
 引き続き、医薬品分野の外資規制のうち、3)ベトナム国内で製品を自社により販売することができるのか、という点について検討します。この点、外資企業による流通業(卸売及び小売)でのベトナムへの進出の可否については、Circular 34/2013/TT-BTC(Circular 34)が規定しています。Circular 34の第2条3項は、リストアップされた一定分野につき外資企業は流通業で進出することができない旨を規定しており、医薬品分野は当該リストに含まれているため、Circular 34に基づき、外資企業が医薬品をベトナム国内で自ら卸売、小売することはできないと解されています1)。なお、WTOコミットメントにおいても、医薬品の流通業については市場開放の対象分野から除外されており、医薬品輸入業のように国内法とWTOコミットメントとの齟齬が生じているわけではありません。
 
 前回の連載で検討した製造業、輸入業での進出の場合も含めて、ベトナム医薬品分野に関する外資規制をまとめると、
1)ベトナム国内に製造拠点を設け、医薬品製造業として進出することは可能
2)外資による医薬品輸入業は規制されておりベトナムへの製品輸出の際には
  現地企業を輸入代理店とする必要がある(但し新薬事法に基づくDecreeに
  より輸入業が外資に解禁される可能性がある)
3)外資による医薬品の卸売、小売は規制されており現地企業を販売店とする
  必要がある
となります。
 
 上記が医薬品分野における外資規制の基本的な考え方ですが、現地の医薬品関連企業への資本参加という形態で進出を行う場合、医薬品製造だけでなく輸入業、流通業を行う現地企業に対しても資本参加を行っている事例があり、外資規制により本来は開放されていない医薬品輸入業及び流通業についても、現地企業への資本参加という形態により、事実上進出が可能となっています。但し、この場合の外資による出資割合は49%が上限と解されています。
 この点、流通業に関する外資規制について定めるCircular 34の文言上は、外資による株式保有が1%でもあれば、流通業での進出が制限される「外資企業」に該当すると解されます。したがって、49%以下であっても外資による資本参加を受けた時点で現地企業はCircular 34における「外資企業」に該当し、以後は医薬品流通業が禁止されると考えるのが素直な結論と思われますが、上記のとおり医薬品流通業を行う現地企業に外資が資本参加しその後も事業が継続されている事例があることから、実務上はこのような解釈は取られていないと考えられます。法の規定内容と実務上の運用にギャップが生じており、今後の運用が不透明な部分であるといえます。
 また、既存の現地企業に対する資本参加ではなく合弁設立という進出形態を取る場合には、外資比率を49%以下としても、当該合弁会社において医薬品流通業のライセンスを取得することは困難であると解されています。上記資本参加に関する事例をふまえて「外資比率を49%以下とすれば、医薬品分野における外資規制の対象とはならない。」との解釈を取ることはできないと考えられる点に注意が必要です。

 

1) ベトナム国内で自社製造した医薬品については、Circular34により規制される「流通業」に該当せず、自社に
  よる卸売、小売が可能と考える余地もありますが、ベトナム保健省現在の運用としては、このような解釈は
  取られていないと考えられます。

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