医薬品委受託製造に関する四方山話【第4回】

2013/07/08 製剤

6.CMO選定の入口
 自社製品の外製を決定した次の難題は、どこに任せるかの決断です。容易に想像できるとおもいますが、どこにも任せられる会社、工場がないとすれば、外製の意思決定をできるわけはなく内製の選択肢しかありませんので、外製を決定した背景には必ず外製候補がある、言い換えれば確実に任せられそうなところの目星が最初からあるということになります。したがって、議論はいくつかの候補会社から、最終的に1社に絞り込む過程にあるといえます。ここで、アウトソーシングに慣れない多くの医薬品メーカーが悩むことになります。どういう基準で選ぼうかということです。いわゆる篩分け作業がここから発生してくることになります。
 
 端的な最初の篩分けは、技術的にできるかできないかということであるのは間違いないでしょう。たとえば、最近の開発主流になってきているバイオ医薬の原薬製造と仮定すると、その瞬間に多くのCMOが白旗をあげることになるでしょう。かくいう私どもの会社も、宣伝不足で申し訳ないのですが、バイオ医薬の製造はできないのかと幾度か問い合わせを受けた経験があります。その時、毎回回答するのは、「バイオ医薬品のバルク充填後の検査、表示、包装工程は実施できますが、原薬製造や無菌バルク充填はできません」とお答えします。この事例から明らかなように、製品のどの工程を外製するのかを決めることが先決になり、それがないと外製候補を挙げていくこと自体無意味になります。たとえば、原薬製造であればバイオ原薬か化学合成原薬かは大きな区分けの1つになりますし、Non-GMP工程かGMP工程かも大きなくくりになるとおもいます。一方で、製剤・包装の場合は、すべてGMP工程ですので、Non-GMP工程かGMP工程かの検討は通常は不要であり、固形製剤、注射剤、液剤、貼付剤といったように剤形ごとに、包装の場合はブリスター包装、瓶包装、SP包装といった具合に峻別されていきます。さらに細かく分類する(例えば、ブリスターならPP包装、PVC包装、AL/AL包装など)場合や、ライフサイクルのステージで分ける場合もあります。たとえば、治験原薬、治験薬製造の場合と商用製造を分けるケースです。また、最近特に注目されているのが、高活性医薬品かそれ以外という区分けです。高活性医薬品の定義が、曖昧であることがさらに事態を複雑化しています。規制当局によって、また委託メーカーによって微妙に異なる場合があるからです。ペニシリン類が他の医薬品との設備共用が許されないということは、業界の常識になりましたが、「飛散しやすく、微量で過敏症反応を示す製品等又は交叉汚染することにより他の製品に重大な影響を及ぼすおそれのある製品等を製造する場合においては、当該作業室を専用化し、かつ、空気処理システムを別系統にしなければならない。」というGMP基準にどの製品、どの状態の半製品が当てはまるかの考え方です。そのあたりもしっかり、会社としての考え方を持っておき、その考え方にあった会社を選ばないととんでもないことになります。たとえば、委託選定する側が、上記GMP基準に該当する「交叉汚染により重大な影響を及ぼすおそれのある製品」としてある抗がん剤を外製したいと考えていても、その製品情報をよく知らないCMOが「抗がん剤の製造できます」というケースがあり得ます。実際に良く聞く話として、「抗がん剤の製造をできますか」という質問ですが、本当は、どんな抗がん剤のどんな工程かがわからなければ「できます」「できません」がはっきり言えないはずです。例を示すと、「本工場では、細胞毒性を示す抗がん剤の原薬は製造できませんが、分子標的抗がん剤の原薬なら製造できます」といった話です。最近、FDAは「非ペニシリン系ベータラクタムのリスクアセスメント:交差汚染防止のためのCGMPの枠組みに」関するガイダンスを出しました(http://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/UCM349009.pdf)。ペニシリン以外のβラクタム類も各サブクラスでの製造の専用化を推奨するようなガイダンスです。こういった情報も含めて、どのCMOがどの種の製品のどのような工程、剤形、包種が製造できるかの情報を知ることが委託側にとって重要になります。最近、日本CMO協会では、こういった情報検索の助けとなるべく、Webサイト(http://www.jcmoa.org/trust_select.html)に会員会社がどういった剤形の製剤を製造できるかの一覧情報を掲載していますので、一助としていただければ幸いです。以上、どのCMOが何をできるかのクラス分け一例を簡単に整理すると、以下の表のようになります。
 
表1 医薬品委受託製造における1次クラス分け例
 

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執筆者について

笠井 隆行

経歴

個人コンサルタント
1985年に塩野義製薬(株)入社 医薬品物性研究、分析法設定、国内外申請資料(CMCパート)作成、原薬製造プロセス研究に従事、
1997年から2年間の米国Schering-Plough社でのGlobal GMP, CMC開発の海外研修後、CMC Office長、治験薬製造室長を兼務
2006年に武州製薬(株)代表取締役社長就任、2012年に日本CMO協会会長(4年間)
2016年に富士製薬工業(株)副社長 生産統括本部長、富山工場長を歴任、
2017年からタイOLIC社 Managing Directorを兼務
2022年にシオノギファーマ(株) 信頼性保証本部長、第一生産本部長を歴任
2024年3月:シオノギファーマ(株)退職

出身地 大阪

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