医薬品の外観目視検査における要求品質の明確化のために【第24回】

2022/12/16 品質システム

自動検査システムについて。

自動検査システム

1.自動検査システム
 外観検査の重要性に鑑み、各社、前述のように検査員の教育訓練、認定制度の採用などに積極的に取組んでいる。しかし、新人検査員を一人前に育てるには多大な労力と時間がかかる(図表1)。個人の資質による部分も大きく、レベル合わせも難しい課題である。また、検査時の異物混入、付着のリスク、疲労による見逃しも考慮しておかなければならない事実である。
 

 そのような背景および検知機器精度、解析装置の処理スピードの向上により、各社より自動検査機が開発され、既に多くの製造所に導入されている。自動検査機を導入する目的を明確にし、検査機特性を十分に理解して使用することで効率的な検査ができ、トータル品質の向上、トータルコストの低減が達成できる。

1.1 自動検査機の進歩と種類
 近年は、カメラの解像度向上、画像処理能力の向上により、高速処理可能な自動検査機が開発されている。但し、自動検査機といっても、対象とする品目の剤形、形状、目的により多種多様である。
 検査の自動化は、全数検査を前提とする製剤化工程以降で採用されることが多く、CCDカメラ等による画像取り込み、画像処理により判別するもの(固形製剤、凍結乾燥製剤等)や検体を回転/停止後に透過光のシグナルにより判別する方法(液剤等)が一般的である。色や形状にもよるが、いずれも50μm程度の異物を検知できるレベルまで進歩している。同一製剤であれば、検査条件を一定に保つことで、変動の少ない連続検査が可能である反面、カメラ特性により異物を検知できなかったり、印刷、刻印を異物誤認識してしまうこともあり、万能とは言えない。製品毎に検査条件をバリデーションにより設定する必要がある。ロットサイズ、色、形状等を考え、目視検査機を使用するか自動検査機を選択するかを検討すべきである。
 実際に医薬品の製造工程に使用されている検査機の一例を示す。

  ・錠剤外観検査機、錠剤異種検査機
  ・カプセル外観検査機
  ・PTP包装検査機
  ・細粒異物検査機
  ・バイアル外観検査機(凍結乾燥製剤、液剤)
  ・アンプル外観検査機
  ・シリンジ外観検査機
  ・印字検査機

 本稿では、全ての検査機を紹介することが目的ではないので、比較的導入が進んでおり、納入実績が多い錠剤外観検査機の一部を紹介し(図表2~5)、その導入手順、導入後の運用について後述する。検査機器メーカーでは、搬送系、検出系、画像処理を工夫することで特徴を持たせているので、各社の目的、処理能力(解像度、処理速度)等、実情に合わせ機種を選定すべきである。
 

 

 

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執筆者について

新井 一彦

経歴 C&J 代表
化学系企業にてバイオテクノロジーを利用した医薬品の探索、開発研究に従事。その後、開発医薬品(無菌製剤)の製造工場立上げに製造管理者として関わりGMP組織体制、基本構想を構築した。
平成17年の改正薬事法完全施行に合わせ、新たに製造販売業を取得するため某ジェネリックメーカーの設立に関与。取締役信頼性保証本部長として総括製造販売責任者の責務を担った。
現在、C&J 代表として、講演、執筆、国内外のGMPコンサル業務活動を推進。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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