医薬品製造業者にとってのBCM(事業継続マネジメント)【第2回】

2012/11/12 製剤

はじめに
 近年、企業を取り巻く環境の変化のスピードはますます加速され、その結果、各企業が直面するリスクが急速に増加かつ多様化しています。従来より「リスクを管理する」という概念は存在しており、特に目新しいものではない、昔から実施している、と感じている企業も多いようです。こうした従来型のリスクマネジメントは、主に各部門や部署別に実施されてきました。一方事業リスクマネジメントは、リスクを企業として把握し、適正に管理することで、企業価値を最大にすることを目指しています。そのためにはリスク情報の集約や管理体制が非常に重要になります。これにより全体最適かつ機動力のあるリスク対応が可能になり、また対外的な説明責任を果たすことになります。
 事業リスクマネジメントの必要性が高まった背景として、『リスク新時代に内部統制』(経済産業省 2003年)は以下の4点の環境変化を挙げています。
 
・規制緩和の進展
 規制緩和が進み、自己責任に基づく事後規制へと社会的枠組みが変わっていく中で、企業がそれぞれの判断でリスクを管理し、収益を上げていくことが必要となってきている。
・リスクの多様化
 急速な技術進歩、事業の国際化、事業展開のスピードアップに加えて、環境問題などの新たな社会規制がリスクをより多様なものとしている。
・経営管理のあり方の変化
 当事者間の暗黙の了解や信頼関係のみに依存した経営管理のあり方に限界が生じてきている。
・説明責任の増大
 市場経済が進展していく中で、リスクの特定、評価や対応を怠った場合、広範なステークホルダーに損害を与えるとともに、市場の信頼を失い、企業自らも厳しいペナルティをうけることになる。
 
1.リスクマネジメントの定義
1.1 リスクとは
 「リスク」という言葉は色々な場面で多様な使われ方をしており、すべてを包括するような定義は難しいですが、JIS Q 2001では次のように定義されます。
「事態の確からしさとその結果の組み合わせ、又は事態の発生確率とその結果の組み合わせ」
 
1.2 リスクマネジメントとは
 「リスクマネジメント」についても様々な定義がありますが、JIS Q 2001では次のように定義されます。
 「リスクに関して、組織し管理する、調整された活動」
 また、企業における事業リスクマネジメントの定義の事例として
 「企業が晒されているすべてのリスク(不確実性)を統合的に把握・管理し企業経営に活かすための組織的・体系的アプローチ」があります。

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執筆者について

和賀 克公

経歴 ハーモニー・マネジメント・コンサルタント 代表。
1974年川崎重工業(株)入社。P&Gを経て1994年参天製薬(株)入社。GMPプロジェクトのリーダーとして、ハード面(設備)、ソフト面(文書管理)を強化する。その後、取締役生産本部長、取締役常務執行役員生産物流本部長、取締役社会・環境担当を歴任。
GMPの推進、新工場建設、グローバル生産体制の戦略立案、またCSR(企業の社会的責任)推進、環境マネジメント(EMS)に携わる。2009年7月より現職。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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