医療機器の生物学的安全性 よもやま話【第9回】

2020/09/18 医療機器

 医療機器の生物学的安全性評価項目の中で、医薬品や化学物質には見当たらない評価項目には、「細胞毒性」、「埋植」及び「血液適合性」があります。このうち、「埋植」は、文字通り体内に埋植してその周囲組織への影響を検索するもので、インプラント機器では特有の評価項目です。経口や注射で投与する医薬品等の化学物質にはこのような考え方の評価項目はありません。「血液適合性」は、「血液毒性」として大部分が医薬品等の生物学的安全性評価にあるのですが、in vivoの血栓性評価は医療機器特有の評価項目です。臨床使用を模擬した環境下での評価で、いわば血液接触医療機器の埋植評価のようなものです。では、「細胞毒性」も医療機器特有の適用方法や有害性を検索するものかというと、そうでもありません。細胞毒性試験でしばしば実施されるコロニー形成法やMTT法などは、医療機器のために開発された試験ではなく、それ以前から、細胞毒性を評価するために用いられてきた試験方法です。正確な理由はわかりませんが、恐らくは当時のISO/TC194のメンバーが、動物実験代替法を意識して、先進的に取り入れようとしたのが、そのきっかけではないでしょうか。

 細胞に対する毒性が発現したら、その細胞はどうなるでしょう。
 以下のような状況がまず考えられます。

  ① 細胞死に陥る
  ② 細胞分裂が遅延したり、停止したりする
  ③ 細胞の代謝活性が低下する

 最も影響が強いのが①で、②~③にかけて幾分インパクトが低下します。

 細胞死はどのような生理的状態となるのかを考えてみますと、形態的には以下の
 ような状況が考えられます。

  ・    細胞膜が破壊されて細胞質が流れ出す
  ・    細胞質のタンパク質が変性して凝固したり、膨化、萎縮したりする
  ・    核クロマチンが変性して凝集する

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執筆者について

勝田 真一

経歴 一般財団法人日本食品分析センター 理事
1986年財団に入所し、医療機器、医薬品、食品、化粧品及び生活関連物資等の生物学的安全性評価に従事。1997年佐々木研究所研究生として毒性病理学及び発癌病理学研究に携わる。1999年東京農工大学農学部獣医学科産学共同研究員として生殖内分泌学研究。日本毒性病理学会評議員、ISO/TC194国内委員会、ISO/TC194 WG10 Technical ExpertやJIS関連の委員などを歴任。財団では薬事安全性部門を主管し、GMPやGLP対応を主導。情報システム部門担当を歴任。大阪彩都研究所長を経て現在北海道千歳研究所長。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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