医療機器の生物学的安全性 よもやま話【第6回】

2020/06/19 医療機器

 新型コロナウイルス感染症の影響で、緊急事態宣言が延長されている現在(2020年5月中旬)ですが、関東では30℃を超す気温になる日があったとかで、2月くらいからはじまったマスク生活は真夏のような気温のもとでは、かなりの不快感があるのではないでしょうか。世界中でマスクをつける人が多くなりましたが、主流は不織布のマスクです。これは、ポリエステル等の化学繊維からなるもので、品質の良否や使い方にもよると思いますが、マスクの内側から多少なりとも遊離した繊維の断片は吸い込まれる運命にあり、不織布とはいえ分解がほとんどされないマスクからのごく微量の微繊維の影響はないのだろうかと思ったりしております。生物学的安全性試験では再現しにくい微量の非分解性の合成ポリマーの長期間にわたる、人の暴露実験となっているかもしれません。

 前回お示しした改正国内ガイダンスについて、特徴的なところを少し詳しく述べてみたいと思います。
 まず、医療機器の生物学的安全評価は、要約すると以下のようなステップで考えるということになります。

 ①   医療機器の人での適用部位、適用期間、最大適用量を定義する
 ②   構成材料を特定し、それらの物理的/化学的特性情報を収集する
 ③   関連の最新科学文献、非臨床試験、臨床使用経験等に基づいて生物学的
   安全性を評価する
 ④   不十分であれば生物学的安全性試験を実施し、それらの結果を用いて
   評価する

 単純化してしまいましたが、このような考え方は、ISO 10993-1に以前から掲載されており、図示したとおりのフローでシステマチックに検討すると考えやすいと思います。この図は今回の基本的考え方にも引用されており、生物学的安全性評価はこのフローチャートにしたがって行う旨が示されています。
 
 

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執筆者について

勝田 真一

経歴 一般財団法人日本食品分析センター 理事
1986年財団に入所し、医療機器、医薬品、食品、化粧品及び生活関連物資等の生物学的安全性評価に従事。1997年佐々木研究所研究生として毒性病理学及び発癌病理学研究に携わる。1999年東京農工大学農学部獣医学科産学共同研究員として生殖内分泌学研究。日本毒性病理学会評議員、ISO/TC194国内委員会、ISO/TC194 WG10 Technical ExpertやJIS関連の委員などを歴任。財団では薬事安全性部門を主管し、GMPやGLP対応を主導。情報システム部門担当を歴任。大阪彩都研究所長を経て現在北海道千歳研究所長。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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