医療機器の生物学的安全性 よもやま話【第5回】

2020/05/15 医療機器

 日本国内では新型コロナウイルス感染症の拡大により、現在(2020年4月中旬)著しい影響があり、関東では医療現場は崩壊ギリギリの戦いとなっているとのことで、医療関係者のご尽力に感謝するとともに、たいへん案じております。GMP Platform登録者の皆さまも、医薬品や医療機器等のサプライチェーンに関連する業務に従事されていることかと存じますが、その責務は重大で、感染リスクの中、業務を維持されておられることに頭の下がる思いです。

 第2回のお話では、国際規格と国内規制の関連についてお示ししました。その際ご紹介しましたが、ISO 10993-1 医療機器の生物学的評価-第1部:リスクマネジメントプロセスにおける評価及び試験が2018年に改訂になったことを受け、国内ガイダンスが改定されましたので、今回は、その大枠についてご説明させていただきます。
 国内ガイダンスの最新版は、今年はじめに発出された、「医療機器の製造販売承認申請等に必要な生物学的安全性評価の基本的考え方についての改正について(薬生機審発0106第1号、令和2年1月6日)」という通知で、別紙「医療機器の生物学的安全性評価の基本的考え方」(以下、基本的考え方と略します)及び別添「医療機器の生物学的安全性試験法ガイダンス」がその本体です。また、「JIS T 0993-1 医療機器の生物学的評価 - 第1部: リスクマネジメントプロセスにおける評価及び試験」がありますが、こちらは、ISO 10993-1の翻訳JISです。

 基本的考え方においては、まず、医療機器の生物学的安全評価は、以下の情報を収集して、総合的に行うように示されています。

 ・構成材料の特定とその物理的/化学的特性情報
 ・生物学的安全性試験結果
 ・関連の最新科学文献、非臨床試験、臨床使用経験等

 つまり、生物学的安全性試験結果だけで、評価はしないということです。当然と言えばそうなのですが、生物学的安全性試験結果は、評価のための一部の情報でしかありません。これは医療機器に限ったわけではなく、医薬品でもそうですし、食品(栄養機能、疾病予防等の有効成分)でも同じです。対象にどのような特徴があり、医薬品や食品の場合ですとどのような生体への作用があるか、医療機器の場合はどのような材料から構成されていて、ヒトのどこに用いるのか、どのくらいの時間適用するのかを明らかにすることが第一歩かと思います。
 その上で、実験動物等を用いて得られた生物学的安全性試験結果と比較して、何らかのハザードが検出されている場合は、それが高用量でのみ生じる現象で、実際のワーストケースの使用量と比較しても十分に安全率が担保されているのかどうかを確認します(前回述べたように遺伝毒性はこのアプローチとはなりませんのでご注意ください)。同様の化学的特徴を有する既存の使用実績のある材料において、同じような毒性情報が得られていないかなどの情報も大切です。

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執筆者について

勝田 真一

経歴 一般財団法人日本食品分析センター 理事
1986年財団に入所し、医療機器、医薬品、食品、化粧品及び生活関連物資等の生物学的安全性評価に従事。1997年佐々木研究所研究生として毒性病理学及び発癌病理学研究に携わる。1999年東京農工大学農学部獣医学科産学共同研究員として生殖内分泌学研究。日本毒性病理学会評議員、ISO/TC194国内委員会、ISO/TC194 WG10 Technical ExpertやJIS関連の委員などを歴任。財団では薬事安全性部門を主管し、GMPやGLP対応を主導。情報システム部門担当を歴任。大阪彩都研究所長を経て現在北海道千歳研究所長。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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