医療機器の生物学的安全性 よもやま話【第3回】

2020/03/19 医療機器

 第1回のお話で、生物学的安全性を評価する基本は、その対象となるものやその原料を、人類が今まで一度も使ったことがないという前提で考えてみることだと申し上げました。有史以来その材料や製品を人類が経験したことがない適用方法で、人体に暴露することになった場合、どうなるのかという観点で考えるということをお示しした次第ですが、それをもう少し掘り下げて考えてみたいと思います。
 まれに講演会講師としてお呼びいただき、生物学的安全性のお話をさせていただくことがあるのですが、私の話下手のせいか、特に午後の会ですと眠気を誘うようです。そこで、ちょっとでも興味をもっていただきたいと例として出すお話がありますので、ここでも紹介させていただきます。

仮定:
・    私は宇宙飛行士になって宇宙旅行していた。
・    突然宇宙船が故障して見知らぬ星に不時着した。
・    生存しているのは自分と異性の宇宙飛行士の二人だけ。
・    食料は底をついた。

 という状況になったとします。大気と水はあるようですが、食料は見当たらず、もうダメかと思っていた時に、不思議な姿の異星人が現れます。昔言われた火星人そのもので、タコのようなシルエットです。でも、日本語を話し、攻撃的でもなさそうで、むしろ知的にすら感じます。
 異星人は、「お腹が空いたでしょう。よいものを差し上げるので食べてください。」と言って、10円玉くらいのタブレット状のものを多量に差し出しました。
 もう食料はないので、ジリ貧でこのままだと飢え死にしそうですし、宇宙船は修理不可能なようです。さあ、もしあなたなら、どうされるでしょう。
 オプションを3つほど用意しました。

①   信用できそうな知的な異星人であるし、お腹が減って限界なので、とりあえず
  食べてしまう。
②   タコみたいな異星人に差し出されたものなど気持ち悪くて食べられないので、
  断固として拒否し潔く最後を向かえる。
③   自分の知りたい情報を聞いてみて、それを自分なりに評価できれば食べてみる。

 さて、皆さまはいずれの立場をとられるでしょうか。
 講演会でお尋ねしますと、やはり③が大半の方のご意見です。そして、少数の方が①を選択されます。そして、②はごく稀ですが、1、2名は選択される方があるというのが、私の今までの経験です。

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執筆者について

勝田 真一

経歴 一般財団法人日本食品分析センター 理事
1986年財団に入所し、医療機器、医薬品、食品、化粧品及び生活関連物資等の生物学的安全性評価に従事。1997年佐々木研究所研究生として毒性病理学及び発癌病理学研究に携わる。1999年東京農工大学農学部獣医学科産学共同研究員として生殖内分泌学研究。日本毒性病理学会評議員、ISO/TC194国内委員会、ISO/TC194 WG10 Technical ExpertやJIS関連の委員などを歴任。財団では薬事安全性部門を主管し、GMPやGLP対応を主導。情報システム部門担当を歴任。大阪彩都研究所長を経て現在北海道千歳研究所長。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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