QCの役割を徹底理解【第6回】

2019/06/28 品質試験

バラツキから眺める統計手法(管理図、工程能力指数)
管理図;

 管理図は、3σ管理です。基本は3σ内にあれば、工程は管理されている、3σを外れると管理されていない、何か異常が生じていると考える管理手法です。統計/確率を理解していないと3σの管理幅から外れた場合は問題で、3σの範囲に入っていると問題ないと思ってしまうとそれは統計/確率思考が身に付いていません。管理図(3σ)内であっても違うことが起きている可能性もあります。逆に管理図外でも問題がない場合(0.3%)もあるという前提での管理なのです。

工程能力指数;
 品質管理の分野において、ある工程の持つ工程能力を管理幅に対して定量的に評価する指標の一つです。
Cp=規格幅/6σ
Cpk=|(規格値上限-平均値)/3σ, (平均値-規格値下限)/3σ| のどちらかの小さい値

規格幅(上限と下限の幅)   工程能力指数   管理状況
 4σ(片側2σ)                        0.67     ×
 6σ(片側3σ=3σ管理)           1.0      △ 
 8σ(片側4σ)                        1.33     ○
10σ(片側5σ)                        1.67     ◎

 Cpは規格幅に対するバラツキの指標であり、CpkはCpに平均値の規格幅の中心値からのズレを反映したものになります。どちらも、規格幅に対するバラツキと平均値からの確率を表す指標となっており、値が大きいことは、規格幅に対して工程が安定していることを示しています。工程能力指数と3σを関係づけて理解することです。
管理図を使うか工程能力指数を使うか。工程の管理には管理図管理、製品品質照査やOOTの設定は規格値との関係が重要ですので工程能力指数のCpkで考察します。
 バラツキを知ることは、その事象が起きる確率を予測することができるのです。OOTを3σ管理で行っているが、1/10~20回に1回OOTがでるので困っているとの話を聞くことがあります。これは統計/確率的な考え方ではその現象はおかしいことになります。なぜなら3σ外になるのは0.3%なのです。330回に1回起きる確率なのです。なぜこのようなことが起きているか? それは3σの値が不適切だからです。たまたま良かった/季節変動が入っていなかったなどの理由で3σの値が小さかったからです。その場合OOTを工程能力指数で考えると、Cpk>2.0だったりします。それであれば、3σでなく、4σまたは5σで管理すれば良いのです。確かに工程では何か3σからの違いが出ているのかもしれませんが、その変動は規格幅から考えたら微々たるものになります。重箱の隅を爪楊枝でつつくようなものです。意味のないことにエネルギーを費やしても品質保証には何のメリットもありません。逆にOOTが出ているのに、毎回「しばらく様子を見る」とのコメントを付記している方がGMP上問題になります。即ち、原因究明を行っていないことになります。仮に原因究明をして改善してもそのメリットは微々たるものです。それにエネルギーを費やすなら他にやるべきことがあるはずです。統計/確率の概念を知っていれば、全体を俯瞰し何が重要かを把握できるようになります。

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執筆者について

脇坂 盛雄

経歴 1979年エーザイ株式会社入社、9年間、品質管理と21年間、品質保証を担う。
専門領域はGQP品質保証、注射剤及び固形剤の異物対応、品質リスクの発見と低減対応 ・医薬品/食品の表示校閲、製品回収リスク回避対策 ・逸脱/苦情対応、変更管理(一変/軽微変更)対応。品質保証責任者(品責)、統括部長および理事を歴任し、2013年9月末に退職。
現在は企業のコンサル・顧問を行う傍ら講演会講師、書籍執筆などを精力的に行っている。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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