バイオ医薬品とベンチャー 【第9回】

2014/07/28 製剤

起業意識
 大学における経営学の授業で心掛けていることは、"学生に起業の意識を持ってもらいたい"と言う点です。
 
 その理由は二つあります。ひとつは、若いうちに起業するという意識を持って生活して欲しいからです。ただ漫然と授業を受け就職をし、会社で駒のように働くのではなく、自分に何が出来るか、どのようなビジネスが社会では必要とされているか、などと常に考えていると勉学に対しても日々の情報に対しても繊細になり積極的に取り組むことになります。結果として仮に起業しない場合にも非常に有意義な社会人生活が送れると思います。
 
起業適齢期
 もうひとつの理由は、起業をするのに時期があると考えています。時期とは年齢のことです。それは35歳以下と50歳以上です。
 
 35歳以下であれば仮に失敗をして通常の社会人になることが出来る可能性が大きいでしょう。また若い人には常識にとらわれない発想があります。社会人を長くやっていると、始める前に「ありえない」とか「常識がない」などと否定してしまうようなことが、思い切って出来るのがこの年代です。
 
 一方50歳を超えると、社会人としての確固たる知識と良識を持ち合わせ、その中で経験に基づく企業が出来ると思います。経験のある方の多数はコンサルタント系の開業をしますが、これは産業を強くすることと直接つながらないので、経験に基づいて実業をはじめていただきたいと思います。業界にとっても社会にとっても価値ある事業になると思います。また、この時期の方は大きな失敗をすることが少ないですし、子供もある程度の年齢になっていることが多いので挑戦もしやすいかと思います。
 
失敗する場合
 私は40代で社長をはじめることになりました。最も雇われ社長ですので起業とは程遠いですが、私の経験に基づく感想です。 副業を持って社長を行っていれば良かったのですが、何の資格もなくただ社長をやりたくて始めてしまいました。これは大きな失敗です。社長を失敗してしまいますと、次にも社長以外の選択肢が少ない(通常の就職が困難)ということを気づいていませんでした。社長経験者を採用したい社長は少ないものです。
 会社から離れて社長を辞めてしまうと、そのことが非常に身にしみます。
 40代での流され起業は、失敗する可能性をはらんでします。
 
 もし、40代で社長に挑戦されている方は、絶対に会社をつぶさないことかと思います。事業が行き詰っても、会社と言う箱を何とか守り続けると、事業は挽回することもあります。社長と言う立場であれば、自然とネットワークも構築され、そこから仕事はつながることがあるものです。しかし、一度会社を離れてしまうと、ネットワーク作りも難易度が上がります。
 潰さないという意思を持って取り組み20年以上社長を行っていれば会社は成功すると思います。

執筆者について

渡部 博次

経歴 10年強、製薬会社にて細胞工学(バイオプロダクツ製造研究)を行った後、商社などを経てバイオベンチャー経営に携わる。基礎研究から臨床、ライセンス、財務、法務、営業にわたり企画開発を行うことによって、経営を再構築させることを得意とする。現在、大学にて「実社会に役にたつ経営学手法」をテーマに教鞭を行う。 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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