国内外規制当局査察対応【第1回】

2014/03/17 品質システム

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【第1回】最新のFDA査察対応(1)FDA査察とは

 近年のFDA cGMP査察は厳しさを増している。最近の事例でも、第一三共株式会社の連結子会社であるランバクシー・ラボラトリーズの原薬工場であるトアンサ工場(インド共和国パンジャブ州)に関して、2014年1月に実施された米国食品医薬品局(FDA)による査察の結果、Form483を2014年1月11日付で受理したことが発表された。
 
 ランバクシーは08年にインドの製剤工場であるパオンタサヒブ、デワスの2工場が既にFDAから問題があるとの指摘があったのを機に米国への禁輸措置を受けている。「13年には最新鋭のモハリ工場もFDAから禁輸措置の警告を受け、米国への後発薬の輸出ができない状況となった。第一三共は米国向けの後発薬は米オーム工場での生産に頼っているが、原薬はトアンサ工場から供給を受けている。トアンサ工場が禁輸措置を受けた場合、米国工場での後発薬の生産にも大きな影響が出るおそれがある。」(2014/1/14 20:17日本経済新聞 )
 
 中国やインドを中心とした開発途上国のcGMP違反をなくすため、FDAは査察職員の現地常駐化を進めているが(注)、査察官自身の資質向上に加え経験や知識アップ、トレーニング強化などにより、cGMPはもとより加盟したPIC/S GMPを査察マニュアルに取り入れるなど、益々査察レベルは詳細かつ精緻化しつつある。Form483に対して、安易な準備、対応、そして査察結果に対する不備な回答を行えば、即座のワーニングレター発出を覚悟しなければならない。また直接製品が見つかった場合、何度もForm483が出され続けることになる。FDAへの回答は明確に対象を限定し、完全かつ現実的で理にかなっていなければならない。ワーニングレターとなった場合、出荷停止はもちろんのこと、その結果がFDAニュースとして世界中に公開されるので、会社の信用は急落し大きな損失を被ることになる。日本の原薬、製剤製造所においても、周到な準備、綿密な計画、そして相当な覚悟がなくしては、FDA査察をパスすることは益々困難となって来ている。

 
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執筆者について

高平 正行

経歴 エイドファーマ 代表
NPO-QAセンター 理事 事務局長
1979年塩野義製薬(株)入社。製薬プラントの立上げ、医薬品製造管理者、合成研究等の製造業務を経て、品質保証部へ転出。信頼性保証本部 品質保証部 次長として、GMP統括管理、GQP品質保証業務(出荷判定、逸脱・品質不良、変更管理、苦情・回収)、国内外にある自社製品関連170箇所製造所のGQP/GMP/QMS/CMCの信頼性保証、医薬品・診断薬・医療機器製造所のGQP/GMP/QMS適合性監査などを約10年間統括する。また、医薬品医療機器総合機構一変・軽微変更、製品管理業務、国内外の医薬品品質保証ガイドライン等のカスタマイズ化にも従事する。
2011年12月より(株)エースジャパン 取締役 製品戦略担当。医薬品の原薬、中間体を中心とした品質保証、製造・試験、製造販売管理全般にわたり経営の視点から携わる。
2016年6月より現職。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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