再生医療等製品の品質保証についての雑感【第67回】
第67回:再生医療等製品の製品開発と製造工程開発とQbD (6)
~ 製造工程開発をはじめる(4) ~
はじめに
今回もまた、下図(再掲)の説明を続けます。前回、現状におけるQbDの考え方として、CQA(重要品質特性)のクリティカリティが低い場合は、治験製造時(遅くとも治験終了)までに、(1)原料細胞や補助試薬などのCMA(重要物質特性)を確定してその後の変更しないこと、および、(2) DS(デザインスペース)を確定すること、これらを前提とする必要があるとお話ししました。理由として、これらの2要素は、「機能設計」に直結するため、現辞典では、変更によるCQAへの影響が否定できないためです。これらの変更を考慮する場合は、予め代替となる環境特性あるは動作作業特性の評価が必須となります。製品設計においては、これらの考慮が不可欠となりますが、現状ではなかなか困難であり、今後、製品設計者が何を実施する必要があるのかについての議論は、製品開発手順(全体)の標準化のみではなく、人材育成の観点からも重要と考えています。
さて、製品設計の議論は今後考慮するとして、今回は、後者(DS)決定※のために、製造工程開発において実施する設計の考え方について解説します。
※ここで決定すべきとするDS値は、製造承認申請時におけるDSの定義とは異なります。
現在の規制におけるDSやRTRTの定義は、必ずしも細胞加工製品には合致していません。
図. 再生医療等製品のQbDアプローチと製造工程開発の手順に関する考え方 【再掲】
(ACE-PJでは原料細胞特性→細胞原料特性に用語調整しましたが本コラムでは変更せず使用します。)
● 治験時までに実施することが推奨される工程設計(設計-1から設計-3)
前回説明した2つの前提のうち、DSの決定については、製品設計者が実施することには制限が生じます。なぜならば、製品設計者は、将来的に製品をどの程度の量で製造するか(生産計画)を共有していないことが当たり前だからです。
CMAの確定手順は比較的容易に想像できると思います。製品のライフサイクルを通して同等の品質が確保できるように、補助試薬や工程資材の規格を理解し、原料の由来や製造過程、保管状態などのトレサビリティや品質保証の状態をまとめ、原材料の受け入れ基準を決定するとともに、供給者との契約および購買の管理が実施可能であることを確認するという、前倒しで調達管理の計画を実施するというイメージで良いと考えます。留意すべき点は、ここでGMPグレードの名称やマスターファイル登録のメーカー保証のみでは、詳細な品質の理解という点では確認が十分でなく、筆者は、薬機法における製品のライフサイクルマネジメントとしては十分とは言えないと認識します。これらは本来、国内の臨床研究(シーズ開発)を推進するために対応されたと理解しており、あくまでも臨床試験や安確法下での実施において条件を備えているという範囲で、薬機法の商業生産において長期的に安定した品質、供給量、変更管理等に対応する品質保証は必ずしも含まれていないと考えます。近年、技術移管においてギャップが生じる事例も散見され、留意が必要と考えます。
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