医療機器関連業界への招待【第4回】

●要旨
 第4回は、開発とデザインやマネジメントについて扱います。開発の早い段階で、デザインに取り組み、マネジメントを取り入れることは、ビジネスとしての成立と、より良い医療の実現とに役立ちます。同時に、薬機法の審査の視点に応えます。コンセプトを明らかにすることは重要であり、実際的なものを目指しましょう。薬機法に示されているリスクマネジメントなどを活用することで、医療現場の変化にも備えることができます。

●はじめに デザインへの取り組み
 第3回において、ニーズからコンセプトに導く、デザイン思考について触れました。デザインは、売れるように見場をよくすることという理解では勿体無いものです。もう少し詳しく説明したいと思います。
 産学連携、医工連携の現場で、しばしばあったことは、こんな製品があるので、医療にも使えませんか?というものです。ニーズに合致していないばかりか、顧客の観察プロセスもないため、商品としての仕上げは無理でしょう。しかし、医療の世界ではまだ使われていない、何か優れた技術が先にあって、ニーズから開発に取り組んでいる人々と出会った時、しっかりとした観察の裏付けとビジネスプランがあれば、上手くいくことがあります。ですから、シーズの発表自体が無意味ということではありません。
 医療機器は、使用する時がとても重要ですから、製品だけをデザインするのではなく、環境も情報もデザインをすることも大事で、その根底にデザイン思考があることが望ましいと思います。

1 バイオデザインに学ぶこと
 バイオデザインの書籍を見るといくつかの章に分かれています。そのうち、法制度の違いなどにより、日本の環境に合わせて読み替えた方が良いところがあります。しかし、バイオデザインが秀逸なのは、観察のプロセスからコンセプトまでをきちんと導いていること、ビジネスプランをしっかりと考えていることにあります。医療は継続性を大事にしなければなりませんから、売れなかったらやめよう、ということではなく、経営が成り立つ仕組みも必要です。


<図1 バイオデザイン テキストの章立て>

2 ステートメント作成がもたらすもの
 バイオデザインのプロセスの中に、ニーズの記述、ステートメントの作成というところがあります。私は、ここが最も大事なものだと考えています。その製品はどんなものですか?端的に説明できるでしょうか?真剣に考えていくプロセスが、その製品を磨き上げます。何を解決しているか、よりも、どんなに素晴らしいか、の方に思考が走ってしまうことがしばしばで、結局、誰にとっての価値なのかが見えず、コンセプトが崩れてしまうことさえあります。
 このステートメントですが、コンセプトがはっきりしないとなかなか書けるものではありません。できるだけシンプルに書くために、日本語をしっかり考えることも必要です。その結果、薬機法で言えば、「使用目的、効能または効果」をどう書くかに結びついていきます。そして、開発コンセプト、そして、設計コンセプト自体もシンプルに書き上げることができます。
 科学技術論文とは少し違った性質のプロセスですから、開発をするということは、研究とは違いがあることを感じるでしょう。

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