ゼロベースからの化粧品の品質管理【第48回】

2024/09/27 化粧品

今回は製品の品質に直接影響を及ぼす原料の調達先の管理に関連する事項として、EUで要求されているEffCI GMP認証制度について。

 

―化粧品用原料に関するEffCI GMP認証制度について―


 化粧品GMPに関して、実際の運用面から留意事項についてお話させて頂いています。
 化粧品の品質管理における重要な課題の一つは、原料供給者の選定と管理です。今回は、製品の品質に直接影響を及ぼす原料の調達先の管理に関連する事項として、EUで要求されているEffCI GMP認証制度についてご説明いたします。
 化粧品の製造プロセスには多くの供給者や委託業者が関与し、それらは製品の品質やコストに深く関わります。特に、化粧品の原料や容器などの資材は直接的に製品品質に影響を及ぼすばかりでなく、企業のマネジメントシステム外で行われるため品質管理が難しい側面があります。このため、化粧品GMP(ISO 22716)では、外部システムの利用時における評価と品質管理の確保について具体的に規定されています。
 具体的には、6.2項の「購入-供給者の評価及び選定」および12項の「委託」では、外部のサプライヤーや委託業者の選定プロセスとその後の品質管理が要求されています。特に原料については、その品質が製品の最終品質に大きく影響するため、誤った原料の使用は重大な品質問題や安全上のリスクを引き起こす可能性があり、特に注意が必要です。

 今回お話するEffCI GMP認証制度は、EUにおいて原料メーカーが遵守すべき基準で、化粧品製造業者が安全で品質の高い原料を選定する際の有益なガイドとなります。この制度を理解し、実践することで、原料の質の確保につながり、化粧品の製品の安全性向上に貢献します。
 化粧品GMPの枠組みの中で、原料供給者の管理と選定は特に重要です。適切な品質管理と規格遵守を通じて、消費者に安心して使用できる製品を提供するための基盤を確立することが重要です。更に、化粧品の製造所ではISO 9001とISO 22716の双方の要求事項を満たす統合的な管理体制を構築することが推奨されており、この要求に対しても、EffCI GMPの理解は製品の品質と安全性を一貫して高める体制作りにも参考となる情報です。

1.EffCI GMPの要求事項の概要
 EFFCI(European Federation for Cosmetic Ingredients)は、化粧品原料の製造業者や供給業者のヨーロッパ連盟です。EFFCI GMPは、この連盟が業界のベストプラクティスとして推奨する規格で、品質管理や安全性確保のためのガイドラインが示されています。
 先ず、このガイドラインでは化粧品業界で使用される原料の製造過程が安全で品質が高いものであることを確保するためにISO9001の要求事項を満たした上でGMPの要求事項を満たすように、GMPの要求事項が付加された規格になっています。
 以下、EFFCI GMPの主な規制内容について説明します。
① 品質管理システムの確立と維持:
●原料の製造プロセスにおいて、一貫性のある品質を確保するための体系的な管理システムを確立することが求められています。
●このシステムは、製造の各段階での品質管理、品質保証、品質管理文書の作成と保管、および品質へのコミットメントが要求されています。

② 施設と設備の管理:
●原料の製造施設は、清潔で衛生的で、製造過程において品質に影響を与える可能性のあるすべての設備や環境条件が適切に管理されていることが求められます。
●具体的には、定期的な清掃とメンテナンススケジュールを策定し、施設の清潔さと設備の機能性を維持する体制を整えることが必要です。清潔な状態を維持するための清掃手順や使用する清掃剤について文書し、徹底しなければなりません。

③ 原料の品質管理:
●原料の品質基準が設定され、それに基づいて原料の選定および受け入れ基準が定められていることが必要です。
●更に、原料の受け入れ検査と品質評価が行われ、適合しない原料は使用されないようにする体制となっていることが求められています。

④ 製造プロセスの管理:
●原料の製造プロセスが文書化され、これに基づいて製造が行われることが求められています。具体的には、製造手順書や作業手順書が作成され、訓練されたスタッフによってこれが遵守させていることが必要です。
●製造工程については、工程中におけるリスク管理と品質コントロールが行われていること、適切な製造記録が作成されていることが必要です。製造中の品質コントロールでは、適切な検査やテストが実施され、製品の仕様に適合していることを確実にしていることが必要です。

⑤ 記録の保管とトレーサビリティ:
●品質保証のために、すべての製造記録と品質管理の文書が適切に保管され、製品のトレーサビリティが確保されることが求められています。
●製造プロセス全体に対する詳細な記録作成し、それを保管し、製品のトレーサビリティが確保されていることが必要です。
●製造記録と品質管理文書は、必要に応じて容易にアクセスできるように整理され、保存されていることが必要です。

 

 

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執筆者について

鈴木 欽也

経歴

1980年に㈱資生堂に入社。掛川工場で処方開発・生産技術開発を担当。ネイルエナメルのゲル化剤、色材の開発や調色に関するコンピューターカラーマッチングシステムを開発。他に高圧乳化、凍結乾燥、パーマ剤、ヘアカラー等の特殊技術開発にも従事。
その後、本社生産技術部で海外事業戦略、海外工場建設、生産技術移転、海外薬事対応の業務を担当した後、再び掛川工場でファンデーションやマスカラ生産の移管業務を担当、本社で海外原料・資材・製品調達の業務を担当した後、中国北京工場の取締役工場長として、工場建設とシャンプー、リンスの現地生産化や化粧品の工業会の業務に尽力。
帰国後、掛川工場技術部長、大阪工場技術部長を歴任、FDAの査察受け入れやEU原薬登録を実施。
また、㈱コスモビュティー執行役員 品質管理部長としてベトナム工場、中国工場を建設。現在、㈱ディー・エイチ・シーさいたま岩槻工場の工場長でメーキャップ製品の工場改修・立上げを実施した。2017年から中小企業診断士として、鋳造業、サービス業、建築業等の事業計画作成支援や企業の5S活動支援を実施している。
品質管理に関しては、米国OTC製品の化粧品業界で日本国内初のFDA査察を受け入れ、指摘事項ゼロ件での対応、ヒアルロン酸のヨーロッパ原薬登録・米国FDA登録、ヒアルロン酸の原薬工場棟の増設を責任者として推進した経験を持つ。
公害防止管理者(水質1種、大気1種)、中小企業診断士(埼玉県正会員)、FR技能士、ターンアラウンドマネージャー(事業再生、(一社)金融検定協会認定)、健康経営EXアドバイザー、ISO9001審査員補、2022年5月から(株)エコノス・ジャパン代表取締役

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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