製薬企業における設備保全の今後のあり方についてGMP視点から考える(4)

 前回、設備保全業務に関連しての活動方式の分類や、それらの活動方式の進展経緯を通じて、設備保全における基礎となる考え方を確認した。今回は、製造業で近年注力対象となっている「統合生産保全」について確認し、それに影響を及ぼしている「リーン生産方式」について、確認する。
 
1.「統合生産保全」の活動内容
 「統合生産保全」(TPM:Total Productive Maintenance)の活動対象エリアを、"TPMの8つの輪(図1)" で説明する。
 
図1:統合生産保全の活動対象エリア
 
(1)は、日常的な、生産性を阻害する個々の設備の「ロス」を解消するための改善活動である。迅速な発見と解決が求められる。
(2)は、主に生産に当たる運転員の活動である。日常活動の中での異常な事象を早期に発見して劣化予防視点から運転条件を見直すなどの活動である。
(3)は、保全業務に当たる人が中心となる活動である。設備全体や個々の機器に対する信頼性や安全性を高めるための計画的な整備業務である。
(4)は、商製品の品質確保と生産性を両立させるために、生産設備の選定・組み合わせに当たり、保全性と信頼性に優れたものを選び、同時に経済性も追及する活動である。
(5)は、不良品を生まないあるいは品質を落とさないための運転条件などを、常時検証し、生産管理の条件に活かして行く活動である。
(6)は、総務、経理、購買、倉庫管理などの間接部門の立場から、生産システムとの関与部分を常時見直し、改善・改革して行く活動である。
(7)は、「統合生産保全」(TPM)活動を継続して実施する体質とするために、"人"へ教育と訓練に関する活動である。
(8)は、災害ゼロ、ゼロエミッション、働きやすい職場環境追及など、安全、衛生、環境に関わる様々な改善・改良の活動である。
 
 「TPM」活動は、日本の生産系企業の職場の全域に渡って実施され、社団法人メンテナンス協会を通じての成果発表なども定期的に行われており、企業を横断しての情報交換も活発である。生産系企業のグローバル拠点に拡がりの中で、海外拠点でもこの活動が実施されて行く方向にある。

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