製薬企業における設備保全の今後のあり方についてGMP視点から考える(2)
医薬品業界の経営環境激変は、設備保全技術を継承する人材を減少させ、経済性優先策による保全のアウトソーシング化をさらに進行させている。このような背景の中、設備保全業務対応部門の弱体化を招かないための有効策が必要である。限られたマンパワーでも、これまでの保全技術を継承し、さらに進化させながら、ビジネスに貢献する設備保全であり続けるための新たな工夫や取組みが求められている。
1.経営環境の激変
医薬品業界は、各国の医療・福祉への取り組みの強化や、医療技術の進展の中で、早くからグローバルな競争環境の中で揉まれてきており、会社の形態や活動内容も大きな変化を遂げてきている。
近年、医薬品業界では、以下のような様々な動きがあり、設備保全に関わる部門も大きな荒波の中に置かれている。
(1)大手企業を中心に、生き残りを掛けて研究・販売に特化し、それに伴い、生産機能を分社化するなどの動きが活発になり、生産工場を分社化し、同時に工務部門(あるいは、エンジニアリング部門)も完全子会社化するケースが見受けられる。
(2)研究投資に多大な資金を伴うことも背景に、市場での競争力増大と利益向上を目指して、外資を含めての大規模な企業どうしの合併などが進行。それに伴う工務部門の縮小化を伴う統廃合が進行している。
(3)工場の分社化がない大手企業でも、工務部門の縮小やアウトソーシングの促進により、余剰要員は早期退職或いは製造部門や販売部門などに異動している。
(4)日本の医薬品業界は米国やEU依存からアジア地区を視野にしたグローバル展開で、研究拠点、製造拠点、販売網が再配置されてきた。その中で総合的に、より効率的な設備の運用が求められている。
(5)高齢化社会による医療費の高騰に対応するため、医薬品の価格圧縮の要請が高まり、ジェネリック企業やCMO企業が増加・成長し、これら企業では、工場増設や設備の新規投資に伴い、工務部門の強化を図るために大手企業より人材のヘッドハンティングを行ない人員の補充をしている。しかし、必ずしも十分な人材が確保されてはいない。
このような環境変化の中、医薬品業界の生産工場における設備保全に充てられる要員は減少傾向にあり、アウトソーシング戦略と少数人員での効果的なメンテナンス手法への転換が必要とされている。
図1:医薬品業界の経営環境変化による設備保全業務への影響
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