医療機器の生物学的安全性 よもやま話【第53回】

2024/05/24 医療機器

身体の中で分解する材料の微量無機元素の影響について。

 

身体の中で分解する材料の微量無機元素の影響

 

 生体内で分解する無機材料のお話をしてきましたが、無機材料にしても有機材料にしても、材料中にはメインとなる構成元素の他に、不純物として微量の無機元素がどうしても残留します。それからが生物学安全性に影響するのかどうかを考える必要があります。
 ただ、何種類もある微量の不純物元素について、前回までのように体内動態を調べるということは現実的ではありません。
 そこで、何か毒性学的に意味のある閾値がないのかと考えますと、医薬品の元素不純物のコントロールとして、日米 EU三極医薬品承認審査ハーモナイゼーション国際会議(ICH)で長らく議論され、国内でもガイドライン化された「元素不純物ガイドライン Q3D」(平成27年9月30日薬食審査発0930第4号)や「ICH合意ガイドライン 元素不純物ガイドライン Q3D R2」(令和5年1月20日薬生薬審発0120第1号)がありますので、これらの利用を考えてみたいと思います。

 このガイドラインには、経口製剤、注射剤、そして、吸入剤中に含まれる元素不純物の許容量を示した表が掲載されています。
 許容量のことをPDE値と言いますが、これは、許容一日曝露量(permitted daily exposure)のことで、生物製剤のような医薬品ではなく、従来の合成化学医薬品製剤の元素不純物の許容値です。
 

元素不純物に係る許容一日曝露量 1 
(ICH合意ガイドライン 元素不純物ガイドライン Q3D R2)

1    この表に記載したPDE値(µg/day)は付録3のモノグラフに示した安全性データに基づいて設定されており、新製剤に適用される。モノグラフのPDE値は四捨五入されていない。実用のため、この表に示すPDE値は有効数字1桁又は2桁に四捨五入されている。10未満のPDE値は有効数字1 桁とし、直近の単数で四捨五入する。10よりも大きいPDE値は適宜有効数字1桁又は2桁に四捨五入されている。この表の四捨五入に適用される原則は、他の投与経路から導き出したPDE値にも適用される。 

 

2ページ中 1ページ目

執筆者について

勝田 真一

経歴 一般財団法人日本食品分析センター 理事
1986年財団に入所し、医療機器、医薬品、食品、化粧品及び生活関連物資等の生物学的安全性評価に従事。1997年佐々木研究所研究生として毒性病理学及び発癌病理学研究に携わる。1999年東京農工大学農学部獣医学科産学共同研究員として生殖内分泌学研究。日本毒性病理学会評議員、ISO/TC194国内委員会、ISO/TC194 WG10 Technical ExpertやJIS関連の委員などを歴任。財団では薬事安全性部門を主管し、GMPやGLP対応を主導。情報システム部門担当を歴任。大阪彩都研究所長を経て現在北海道千歳研究所長。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

68件中 1-3件目

コメント

この記事へのコメントはありません。

セミナー

2025年5月30日(金)10:00-16:30

バイオ医薬品の開発とCMC戦略

2025年6月16日(月)10:30-16:30~2025年6月17日(火)10:30-16:30

門外漢のためのGMP超入門

2025年9月10日 (水) ~ 9月12日 (金)

GMP Auditor育成プログラム第20期

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

株式会社シーエムプラス

本サイトの運営会社。ライフサイエンス産業を始めとする幅広い産業分野で、エンジニアリング、コンサルティング、教育支援、マッチングサービスを提供しています。

ライフサイエンス企業情報プラットフォーム

ライフサイエンス業界におけるサプライチェーン各社が提供する製品・サービス情報を閲覧、発信できる専門ポータルサイトです。最新情報を様々な方法で入手頂けます。

海外工場建設情報プラットフォーム

海外の工場建設をお考えですか?ベトナム、タイ、インドネシアなどアジアを中心とした各国の建設物価、賃金情報、工業団地、建設許可手続きなど、役立つ情報がここにあります。

※関連サイトにリンクされます