【第10回】デジタルヘルスで切り拓く未来

「デジタル政策と私たち。」

●要旨
 デジタル政策の動向を見ながらデジタルヘルスの動きを考えることも大切です。法制度や政策の策定の背景や動向に関心を持ち、その意味を考えます。「DASH for SaMD2」の策定により開発環境の整備が進められています。また、マイナンバーを鍵に健康と暮らしの接点が広がっていきます。構築が進むプラットフォームから、それぞれに合わせた健康に関する情報が届く時代に向かっていくことになるでしょう。
 
●はじめに 政策等はどう作られるか
 法律や政策の作られ方に関心はありますか。医療関連製品やサービスには、法制度が定められていますから、薬機法等について関心を持っている人が殆どでしょう。医療政策についても影響が小さくないから、情報収集をする人も多いでしょう。どのように定められ、変化するかについても関心を持ちましょう。法律や政策が作られる背景に大きな意味があるだけでなく、そのルールメイキングのプロセスにも変化が起きています。法制度や政策は評価を受ける必要があり、制定の背景の変化を踏まえて改善改良が行われています。例えば、covid-19に関連して様々な制度が制定されましたが、現在では廃止となったものも少なくありません。
 振り回されると考えるのではなく、先を読み、時には参画することがとても大切です。デジタル政策は、技術の変化が速く、キャッチアップが大変です。エマージングな技術の出現スピードが速いのですから仕方ありませんが、しっかりと先を見ながら、ルールに対するイメージを持っておきましょう。法制度の成り立ちを読み取り、情報を手に入れるにはコツがあります。さらに、私たちが参画することも可能です。

<図表> みんなのために、から、私のために

1 DASH戦略から続くもの
 「DASH for SaMD」から「DASH for SaMD2」にブラッシュアップされて半年以上が経ちました。開発の道筋を強化し、グローバル展開の環境を整備しました。「医療機器プログラム事例データベース」における該当性判断共有の仕組みが機能し、規格基準の作成方法もブラッシュアップされ、早く製品実現を目指せるようになりました。法制度には規制と促進の面があり、国民のヘルスケアの推進につながります。
 「医療機器プログラム事例データベース」には、毎月のように新しい情報が掲載されています。もちろん、同意が得られたものに限られ、全てが掲載されているのではありませんが、情報を共有することで効率の良い開発環境が生まれていることは実感できます。よく見てみると初期の頃と考え方に変化を生じている場合もあります。技術的に解決力がアップすることで、期待される効果が明らかになることもその背景にあるでしょう。ですから、常に見ておくことが大切です。
 政策を作るときは、必要性やフィジビリティなどを勘案して決められますが、新しい技術やサービスの萌芽にも目を向けなければなりません。私たちがよく知っている範囲で考えていると、課題の解決力に不足を生じたまま、新しい時代への足掛かりを失うことにもなるでしょう。ホライゾンスキャニングはとても重要で、PMDAも取り組んでいます。また、AMEDのプロジェクトテーマや、ガイダンス制定に関するコメントの募集など、門戸も開かれています。最近では、人工知能を用いて膨大なデータからエマージングの兆しを見つける技術もあります。

2 マイナンバーと基盤
 俯瞰的な制度の基礎には、私たち一人一人の情報の紐付けが必要なことがあります。プライバシーやセキュリティの問題に真剣に取り組む必要がありますが、データのジャーニーの鍵としてマイナンバーが果たす役割はとても大きいでしょう。
 保健衛生という大きな括りでは、診断や治療以外に健康や福祉も含みます。例えば、感染症拡大の防止においては、接触機会を減らすことも大切です。また、感染の可能性についての情報も重要で、麻疹については様々な呼びかけが行われています。新型コロナウィルス接触確認アプリ(COCOA)を覚えていますか。たくさんの課題を世の中に提示してしまいましたが、報道で広くお知らせするよりもパーソナルな方法でアプローチできることは大切です。デジタルヘルスの開発のライフサイクルをしっかりと考え、何が問題なのか見ながらサービス設計をすることは大切です。
 ところで、マイナンバーポータルを利用していますか。マイナンバーによって暮らしと健康の接点が結ばれています、保険証の役割ができることなど機能が増えています。保険調剤に関する記録も繋がっています。ぜひ、あなたのスマートホンの中で情報を見てください。例えば、災害時に調剤の記録が探せるのは、医療の継続に重要です。お薬手帳のように服薬指導の記録や服薬タイミングのお知らせはできていませんが、今後、必要な機能と結びつくことができれば良いでしょう。

 

 

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