知的財産の基本から知財ミックスまで【第14回】

 

意匠の登録要件について

 こんにちは、弁理士法人ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士の鈴木徳子です。前回は、意匠の保護対象について説明しましたので、今回は、どのような意匠が特許庁で登録されるか(登録要件)について説明したいと思います。

 意匠権を取得するには、特許庁に出願し、登録要件を満たしているかどうかの審査を受ける必要があります。意匠権は自分だけが実施できる強力な独占排他権であるため、一定の登録要件を満たすものだけに意匠権が付与されます。

 意匠出願から登録までの期間は、特許庁の審査がスムースに進んだ場合で6~7ヵ月程度です。意匠は結構高い確率で登録されます。特許庁の統計データによると、2021年の意匠出願件数は32,525件、登録件数は27,490件で登録率は84%でした。

 意匠の主な登録要件は次の通りです。これらの登録要件を満たしていないと登録されません。

 (1)今までにない新規な意匠であること(新規性)
 (2)容易に創作できた意匠ではないこと(創作非容易性)
 (3)最先の出願であること(先願主義)
 (4)既に出願された意匠と同一、または類似していないこと

 では、登録要件の一つである新規性について説明します。


新規性
 意匠の新規性とは、「出願した意匠が、その出願日よりも前に公然と知られた意匠、文献等に記載された意匠、またはこれらに類似する意匠に該当しないこと」です。

 従来意匠に該当する文献等は、出願日前に公開されている意匠公報のみならず、新聞、雑誌、製品マニュアル、カタログなどのあらゆるものが該当します。インターネット等の電子媒体で公開されているものも該当します。

 特許庁は国内外のウエブサイトも調査しており、「よく見つけてくるな」と感心するようなところから先行意匠を見つけてくることがあります。弊所で過去に取り扱った意匠出願案件では、実際に、海外のウエブサイトで公開されていた他社の商品デザインと類似するという理由で、新規性が無いという拒絶理由通知が特許庁から発せられました。

 ところで、意匠法では、公知意匠と同一の意匠だけでなく、「類似する意匠」であっても新規性がないと判断されることに留意が必要です。登録意匠の効力が類似範囲にまで及ぶためです。

 特許庁の報告によると、2021年に新規性欠如の拒絶理由が通知(国際意匠登録出願に対する拒絶通報を除く)された件数は2,621件であり(全体の出願件数は32,525)、そのうち約16.7%の437件が自己の1年以内の公開意匠(国内外の公報除く)が原因で、拒絶理由が通知されています。

 意匠出願をする「前」に、自社ホームページ、オンラインショップやSNSで製品を公表したり、展示会に出展したような場合は、自らが公開した意匠に基づいて新規性がないという理由で拒絶されるので注意が必要です。

 このような場合でも、一定の手続きをすれば新規性が喪失しなかったものと取り扱われ拒絶理由を免れることができます。これが、新規性喪失の例外適用といわれるものです。
 

 

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