知的財産の基本から知財ミックスまで【第11回】

2023/04/21 その他

存続期間の延長登録制度について。

存続期間の延長登録制度について

(1) はじめに
 特許権は、原則として出願日から最大20年間存続することになります。

 しかし、医薬品・医療機器等の一部の分野では、安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可等を得るために所要の試験・審査等に相当の長期間を要することがあります。その結果、その期間はたとえ特許権が存続していても、医薬品・医療機器として販売できず、実質的に特許権の存続期間が侵食されてしまうことになります。

 そこで、浸食されてしまう期間を回復させるために、5年を限度として特許権の存続期間を延長することができる存続期間の延長登録制度(特許法第67条第4項)が設けられています。
 

引用:特許権の存続期間の延長登録出願に関する審査基準の点検・改訂について(特許庁)


(2) 延長期間について
 存続期間の延長登録制度によって、延長される存続期間は、5年を限度として、特許法第67条第4項の政令で定めた処分(薬機法に係る承認・認証や農薬取締法に係る登録)を受けるために特許発明を実施することができなかった期間です。

(3) 存続期間の延長登録制度の注意点
 この制度の注意点としては、特許法第67条第4項の政令で定めた処分を受けた日から原則として3月以内に延長登録出願を行う必要があることです。

 そして、この3月以内に、延長登録出願に必要となる次のような書類作成・収集を行う必要があります。
 ● 特許発明の実施に政令で定める処分を受けることが必要であったことを証明するため必要な資料
 ● 政令で定める処分を受けることが必要であったために特許発明の実施をすることができなかった期間を
   示す資料
 ● 政令で定める処分を受けた者が特許権についての専用実施権者若しくは通常実施権者又は当該特許権者
   であることを証明するため必要な資料
 ● 記載内容を裏付けるための資料

 なお、延長登録出願は、特許庁に出願後に審査官の審査に付され、拒絶理由通知が発せられることもあります。
 

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執筆者について

高松 孝行

経歴

ブランシェ国際知的財産事務 共同代表弁理士。
茨城県出身。東京工業大学大学院にて原子核工学を専攻。大学院での研究経験を生かして、弁理士となる。特許事務所勤務を経て、独立行政法人産業技術総合研究所(現国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研))にて、医薬・医療機器関係の技術を含む技術移転業務に従事。数百社との技術移転交渉、1,000通を超える契約書作成を経験。産総研退職後、2015年3月事務所開設。現在、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業カタライザーおよび独立行政法人中小企業基盤整備機構の中小企業アドバイザー等の公的機関の専門家として、医学部の教授、医師、医療機器メーカー、医療ベンチャー企業等の支援を行う。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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