バイオ医薬品とベンチャー【第5回】

2013/07/16 製剤

経営学・・・
 現在、経営学の講義をさせていただいています。ほとんどの学生からは「よくわからない」、「字が汚い」など酷評を受けておりますが、中には「おもしろい」といっていただける方もおります。このような学生が何人かおり、授業後に質問に来たり悩みの相談に来たりすると、講義を続けていて良かったと本当に思います。
 「会社とは何か」、講義上では説明し、先人のすばらしい知恵を紹介しいかにも分かったように話しておりいただいておりますが、実際は難問だらけです。
 
"会社とは、法人格を持った営利企業である"と経営学では定義されています。多くの側面があることは、ご承知の通りですが、基本は変わらないと思います。法人格も、企業も特に説明が要らないほどはっきりとしたものです。営利という言葉も、疑いようがないと思いますが、そこに目的と手段を組み入れると、回答が画一的でなくなってきます。
 
営利目的・・・
 会社でもプライベートでも、営利目的、つまりお金の話ばかりすると嫌われます。日本では特にそうです。夢の話をすると、好感されます。
 しかしながら、会社というのは営利が成り立たないと継続できません。つまり、営利第一主義です。夢がないと言われようと、ケチと言われようと、見合った給料を払う一方経費の節約を行い、1円でも黒字にしている会社は優秀であり、高額の賃金や贅沢な保養施設などを持っていても、赤字の会社は優秀とは言えません。土地を担保に入れて、借入をしてキャッシュフローを賄っていても、営業上で赤字であれば、継続性は困難です。投資を受けての事業継続でも同様です。
 その様な点を考えると、創薬系のバイオベンチャーはどうなのでしょうか?大型の投資などを成功させ、場合によってはIPOを行って、資金を集めて事業を行っていますが、営業上の黒字のところは多くはありません。ライセンス料を含めても長い間赤字の会社もあります。この形は、将来の大成功の確率を考えての投資であるので、投資の形式については、必ずしも問題あるとは言えませんが、成功確率が低すぎるのは問題かもしれません。
 バイオ系に限らず問題になるのは、資金需要の観点から将来性のみで上場し資金を集めた途端、創業時の多くのメンバーがストックオプションなどの利益を得て辞めてしまうケースがあります。事業が成功したのちであれば構わないのですが、事業半ばでメンバーが大きく入れ替わっている会社が多いことは否めません。このような時に、もう一度、会社は営利企業ということを痛感し、たとえストックで収入を得たとしてもそれは株主が出資してくれた大切なお金ですので、会社に利益がもたらすまで頑張ってほしいと思います。

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執筆者について

渡部 博次

経歴 10年強、製薬会社にて細胞工学(バイオプロダクツ製造研究)を行った後、商社などを経てバイオベンチャー経営に携わる。基礎研究から臨床、ライセンス、財務、法務、営業にわたり企画開発を行うことによって、経営を再構築させることを得意とする。現在、大学にて「実社会に役にたつ経営学手法」をテーマに教鞭を行う。 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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