細胞・遺伝子治療薬製造の成功に向けたモダナイゼーション

細胞・遺伝子治療薬の製造について。
記事投稿:マスターコントロール株式会社
5年前に細胞・遺伝子治療 (Cell and Gene Therapy(CGT))における治療薬として初めてKymriahが承認されて以来、時代はどのように変化したのでしょうか。それ以来、かつてはバイオファーマのニッチな分野と外部から見られていた治療薬が、ライフサイエンスの中で最も急速に拡大し、投資家の関心を集める製品パイプラインに成長しました。bluebird bio社が1人当たり300万ドルの遺伝子治療薬*¹ Skysonaの認可を取得し、大きな成功*² を収めたことからも、CGTの勢いが増すばかりであることは明らかです*³。
細胞・遺伝子治療薬の製造がゴールドラッシュで儲けるためのものだと言っているわけではありません。これらの新しい製品の開発者は、Ultra-Rare Desease (超希少疾患)への適用を越えて拡大する可能性を持つ、人生を変える治療法を生み出すために懸命に努力しているのです。しかし、革新的な治療法を市場に送り出すには、CGTの開発者が3つの重要な能力を持つことが必要です。
- 合理的なプロセス
- 柔軟なシステム
- 製造、臨床試験、承認プロセスを十分に支えるために必要なスケーラビリティと生産能力。
細胞・遺伝子治療CMOの重要な役割
必要な能力を自社で開発できない企業(つまり、ほとんどすべての企業)は、製造受託機関(CMO)を利用することが多くなっています。CMOは、革新的なCGT製品を開発する典型的な中小のバイオテクノロジー企業とは異なり、専門知識とリソースを適切に組み合わせているため、細胞・遺伝子治療の分野では非常に注目されています。あらゆる規模の遺伝子治療開発者が外部の製造リソースを評価するようになったため、適応性と拡張性が細胞・遺伝子治療分野のCMOにおいて、最も魅力的な特性として急速に定着しつつあります。
では、敏捷性と拡張性がCMOにとってそれほど価値のある特性であるならば、なぜ多くのCMOがこれらの治療薬を供給できないのでしょうか(つまり、なぜ現在、細胞・遺伝子治療CMOの製造能力は12~18カ月待ちなのでしょうか)*⁴。簡単に言えば、「需要」です。細胞治療や遺伝子治療の製造のアウトソーシングに対するニーズが劇的に高まっている事が要因です。実際、従来のバイオ医薬品製造のアウトソーシングは僅か35%であるのに対して、細胞・遺伝子治療薬では製造の90%以上に及ぶと推定されています*⁵。
需要の高まりに対応するためには、生産能力の増強に加えて、細胞・遺伝子治療薬の製造に関わる生産・品質プロセスの合理化が鍵となります。
細胞・遺伝子治療薬の製造と品質システムに対する要求水準の向上
開発の臨床面に重点を置く多くの医薬品承認とは異なり、細胞・遺伝子治療の承認では製品の品質と製造工程がより厳しい審査を受けることになります。この点を補強するのが、10月に開催されたマスターズ・サミットの基調講演に登壇するScott Gottlieb氏が、米国食品医薬品局(FDA)の長官だった頃に述べた、今では(とにかく細胞・遺伝子治療の製造業界では)有名な言葉です。
「従来の医薬品の審査では、審査の80%が臨床分野に集中し、20%程度が製品の問題に集中するのに対し、細胞・遺伝子治療に関しては、この一般原則がほぼ完全に逆転していると言えるでしょう」とGottlieb氏は述べています。「初期の臨床効果は早期に確立されることが多く、時には少人数の患者を対象とすることもあります。より困難な問題は、製品の製造と品質に関するものです」*⁶。
製造と品質にもっと注意を向けることは、論理的なアプローチです。しかし、スイッチを入れるほど簡単なことではありません。細胞治療や遺伝子治療の製造や品質管理プロセスを最適化するには、適切なツール群が必要です。
新しい80/20の比率、新しい細胞・遺伝子治療用ソフトウェアソリューション
CGTの開発者が科学的発展の最先端で活動しているにもかかわらず、ほとんどの細胞および遺伝子治療の製造環境で行われている製造プロセスは、いまだに紙を使った手作業で行われているのが現状です。しかし、CGTの進化に伴い、古いやり方が現代のニーズに適合していないことは明らかです。BioPlan Associates社が調査したバイオファーマの製造専門家によると、細胞・遺伝子治療薬の製造において最も必要とされる改善は、プロセス制御/自動化です*⁷。
この調査報告書の著者は、細胞および遺伝子治療の製造において自動化が必要とされる最も重要な分野は、現在紙で手動管理されている製造記録のデジタル化であると指摘しています*⁸。自動化はまた、細胞・遺伝子治療薬メーカーに以下のような他の重要な分野においても著しい改善をもたらすことができます。
プロセス開発と商業製品の製造のスピードを上げる。
製造コスト全体の削減
バイオプロセスのより一貫した、より良い標準化をサポートする。
電子バッチ記録(EBR)を導入することで最も大きな前進が得られることが分かれば、定量的な効率性を獲得できる領域がさらに広がります。EBRやその他のデジタル化された製造記録は、単に紙文書の中に閉じ込められていた製造プロセスや情報の可視性を高めるだけでなく、ライフサイエンス企業が治療薬の生産を真に最適化し、継続的な改善努力に貢献するための洞察を得て、行動に移すことができるようになります。また、規制当局が各種記録に対してデジタル化を要求することが多くなっているため、EBRはビジネスとコンプライアンスの両面で非常に有意義なものになっています。
細胞・遺伝子治療ソフトウェアで成功に備える
製造記録をデジタル化する細胞・遺伝子治療ソフトウェアソリューションは、製造と品質との間のギャップを埋めることができます。
実績のある堅牢なソリューションにより、次のようなことが可能になります。
- ‘right-first-time’メトリクスの改善と比較分析の実行
- 逸脱および是正措置/予防措置 (CAPA) の全面的な削減
- 製品リリースの迅速化
製造製造記録をデジタル化し、重要なプロセスを統合し、細胞や遺伝子の製造および品質システムを統合する専用ソフトウェアソリューションから、組織がどのような利益を得られるかについては、MasterControlのManufacturing Execution Simplifiedのページをご覧ください。
参照
- "Regenerative Medicine: Disrupting the Status Quo," Alliance for Regenerative Medicine, 2021 annual report.
- "Gene Therapy Medicinal Products,” Paul-Ehrich-Institut, Federal Institute for Vaccines and Biomedicines, accessed Sept. 6, 2022.
- "A $3M gene therapy: Bluebird bio breaks its own pricing record with FDA approval of Skysona,” Fierce Pharma, Sept. 19, 2022.
- "Obstacles Preventing GMP Cell Therapy from Becoming Mainstream,” ThermoGenesis blog, Sept. 15, 2021.
- "Cellular and Gene Therapies Face a Manufacturing Capacity Crunch,” by Ronald A. Rader, BioPharm International, Sept. 1, 2020.
- "Remarks to the Alliance for Regenerative Medicine’s Annual Board Meeting,” speech by Scott Gottlieb, M.D., May 21, 2018.
- "Cell & Gene Therapy Bioprocessing: Demand For Better Process Control, Expertise & CMOs,” by Ronald A. Rader and Eric S. Langer, Cell & Gene, May 14, 2021.
- Supra note 7.
著者のご紹介
James Jardine
James Jardineは、GxP Lifelineブログの編集者であり、クラウドベースの品質、製造、およびコンプライアンスソフトウェアソリューションの大手プロバイダーであるMasterControl, Incのマーケティングコンテンツチーム・マネージャーです。2007年以来、MasterControl, Incやさまざまな業界誌でライフサイエンス、テクノロジー、規制に関する事柄を扱っています。ユタ大学でジャーナリズムに重点を置いたコミュニケーションの学士号を取得しています。MasterControl, Incに入社する前は、いくつかのシニアコミュニケーション、オペレーション、および開発のポジションを歴任しました。非営利部門で10年以上勤務し、アメリカ癌協会のユタ州/アイダホ州コミュニケーション担当ディレクター、ユタ・フード・バンクの助成金および契約担当マネージャーを務めました。
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マスターコントロールのソフトウェアは、日本企業を含む世界1,500社以上のお客様にご利用頂いており、米国FDA(米国食品医薬局)の全世界のORA部門にも導入頂いています。
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