医療機器製造業トレンドPart3.:イノベーションが規制の進化を促進する

医療機器製造におけるコンプライアンスを維持するための3つのデジタルツールを紹介します。
記事投稿:マスターコントロール株式会社
医療技術分野の製造企業は、破壊的な技術、急速に増加するデータ量、変化する規制環境にまつわる絶え間ない課題に直面しています。これらの医療技術製造企業は、満たされていない患者のニーズを満たす革新的な新しいデバイスを創造し、市場に届けようと尽力しているため、医療機器における人工知能(AI)や機械学習(ML)などの先進技術の利用が増加しています。新しい規則や規制に関しても同様です。
ボストン・コンサルティング・グループ社(BCG社)によると、米国食品医薬品局(FDA)は「デジタルトレンドに対応するために多額の投資を行い、その取り組みは世界の産業界から広く賞賛されている」ため、医療技術の進歩に効果的に対応しているようだ、という良いニュースもあります*¹。
BCG社とUCLAバイオデザインは、AI/MLデバイスの認可を取得した29社を含む医療技術企業の100人以上の上級管理職を対象に調査を行った結果、回答者の79%がFDAは世界の他の規制当局と比較して、医療イノベーションの進化するニーズにより効果的に対応してきたと考えていることを明らかにしました。また、FDAは「患者のための新規デバイスの安全性と有効性に関する最高水準を維持しながら、革新的医療技術への患者のアクセスを促進する特別プログラム、経路、政策の策定に投資している」と とUCLAバイオデザイン執行役員のJennifer McCaney博士*²は述べています。
例えば、FDAは最近、「人工知能/機械学習(AI/ML)ベースの医療機器としてのソフトウェア(SaMD)行動計画」を発表し、AI/MLベースの医療ソフトウェアの監視を進めるためのFDAの次のステップを概説しています。FDAは、AIやMLを利用した安全で効果的かつ高品質な医療機器の開発に向けたガイダンスや指針を導入し、イノベーションを阻害することなく基準や規制を提供する必要性を強調しています*³,*⁴。
AIやMLなどの進歩に伴い、医療機器製造組織に対する規制要件が進化し続ける中、規制当局は正しい方法が取られていることを証明する、より多くのデータや記録を含む文書化された証拠を求めています。同時に、規制当局からの指摘は、データインテグリティにますます重点を置くようになっています。
変化するコンプライアンス要件により良く対応し、品質管理プロセスおよび製造の各段階を通じてリスクを管理するうえで、医療機器メーカーは、製造現場のデジタル化を通じて、品質保証をものづくりに組み込み、製品のライフサイクル全体でデータ管理を向上させる必要があります。
医療機器製造におけるコンプライアンスを維持するための3つのデジタルツール
イノベーションによる規制の進化に直面している医療技術企業は、効果的なコンプライアンスを実現するために、新しい業務方法とともに、製造環境におけるデジタル化を採用するための実践的なステップをいくつか挙げることができます。
#1: 文書中心ではなく、データ中心になるためのデジタル化
医療機器製造企業の製品データが紙の記録や独立したスプレッドシートのままでいると、品質が文書中心になってしまい、デジタル製造のギャップを生み出します。つまり、データよりもドキュメントの正確性、完全性、コンプライアンスを重視せざるを得なくなるのです。デジタルツールを統合してペーパーレス化することで、医療機器製造者はデータ中心になり、製品のコンプライアンスに関するリアルタイムの情報を得ることができ、ペーパーワークの量を減らし、情報の正確さを保証することができます。
#2:デジタル化により、品質を外部ではなく、ものづくりに組み込む
デジタル機器履歴記録(DHR)ソリューションと堅牢な電子品質管理システム(eQMS)を完全に統合すると、製造ラインでの手動データ入力エラーの削減、作業指示書と標準作業手順のDHRフェーズへのリンク、ラインでの自動トレーニング開始とトレーニング遵守、’Review by Exception’ (例外によるレビュー)の採用により、品質とコンプライアンスを製造システムに組み込むことができます。その結果、リアルタイムの可視化、エンドツーエンドのトレーサビリティ、ものづくり全体のデータの整合性が改善されました。
#3: デジタル化でバリデーションを負担ではなく、競争力に変える
FDAはソフトウエアのバリデーション活動において、「最も負担の少ない方法」を追求することを推奨しています。
重要なビジネスプロセスに焦点を当てたリスクベースの自動バリデーション手法を採用することで、医療機器製造企業はシステムバリデーション全体の時間を数ヶ月から数時間にまで短縮することができます。*⁵ 変更管理については、レビューが必要な変更点を先進技術で提示することで、アップグレードのリスクを抑え、クラウドでの持続的なバリデーションを可能にします。
まとめ
医療機器製造企業にとって、コンプライアンスを常に維持することは非常に困難な事ですが、コンプライアンス違反はコストや企業の評判だけでなく、最終的には製品のエンドユーザーの生命に影響を与えます。独特の複雑な規制のハードルに直面しているこれらの企業や組織は、製造現場にデジタル化を取り入れることで、効果的にコンプライアンスを達成することができます。
医療機器製造のトレンドについては、トレンドブリーフ「Medtech Manufacturing: From Disruption to Evolution(医療機器製造:破壊から進化へ)」をご覧ください。
参照
- "For Cutting-Edge Innovations, the US Pulls Ahead of the EU in Medtech Regulation", Christian Johnson, Jennifer McCaney, et al., Boston Consulting Group, March 2022.
- "What Sets the FDA Apart on Medtech Innovation? An Expert Weighs In", Kat Jercich, Healthcare IT News, April 2022.
- "FDA Releases Artificial Intelligence/Machine Learning Action Plan", FDA, January 2021.
- "Good Machine Learning Practice for Medical Device Development: Guiding Principles", FDA, Health Canada, and UK Medicines and Healthcare products Regulatory Agency, October 2021.
- "The Least Burdensome Provisions: Concept and Principles", FDA, February 2019.
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著者のご紹介
David Butcher
David Butcherは、15年以上にわたってライフサイエンスと産業用製造業のビジネスとテクノロジーのトレンドを取材してきました。現在はマスターコントロールのコンテンツマーケティングスペシャリストで、以前はThomas Publishing社のIndustry Market Trendsのエディター、Technology Marketing Corp.社のCustomer Interaction Solutionsのアシスタントエディターを務めていました。ニューヨーク州立大学パーチェス校でジャーナリズムの学士号を取得しています。
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