医療機器の生物学的安全性 よもやま話【第32回】

2022/08/05 医療機器

血液適合性試験のバラエティーについて。

血液適合性試験のバラエティー

 血液適合性試験は、前回お話したように、「血栓、溶血、血小板、白血球及び補体の活性化のような、感知できるほどの臨床的に重大な副反応及び/または血液に関係する有害な事象」の有無を検索することが目的です。
 そこで、国内ガイダンスには、ISO 10993-4:2017をもとに下表のような分類で、代表的な試験が挙げられています。

血液適合性試験の評価項目
試験のカテゴリ 評価項目
溶血 材料起因 遊離ヘモグロビン測定(ASTM、NIH)
機械的因子起因 遊離ヘモグロビン測定
血栓形成
(in vivo/ ex vivo)
肉眼的観察、閉塞率、解剖学的検査、病理組織学的検査、走査型電子顕微鏡検査
血栓形成(in vitro)
血液凝固 トロンビン-抗トロンビン複合体(TAT)、フィブリノペプタイドA(FPA)、部分トロンボプラスチン時間(PTT)
血小板活性化 血小板数及び活性化マーカ(血小板放出因子及び活性化マーカ(β-トロンボグロブリン(β-TG)、血小板第4因子(PF4)、トロンボキサンB2(TxB2))、または、走査型電子顕微鏡観察
血液学 全血算(CBC)、白血球活性化因子
補体系 SC5b-9 (C3aを追加してもよい)

 溶血については、以前もお示ししたように赤血球の細胞膜が破壊される現象ですが、細胞質中のヘモグロビンが溶出することにより可視化できます。例えば、筒状のガラス容器に入れた水の中に血液を滴下すると、水全体が赤く染まることが観察できますが、これが溶血しているという状態です。水ではなく、0.9%程度の食塩水(生理食塩液)に滴下してみると、微粉末をまいたように血液が広がり、その時点でも水とは明らかに異なるのですが、その後時間が経つと底に赤血球が溜まっていることが観察できます。これは、赤血球が生理食塩液より重い(比重が大きい)ため沈下した像ですが、この場合上澄み液は透明で溶血性はないと考えられます。このように目で見てもある程度の判断はできるのですが、試験では、より客観的に示すために、上澄み液中の血色素(ヘモグロビン)を化学的な方法で定量して、無処置対照と比較することにより、溶血率を求めるという方法が採用されています。

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執筆者について

勝田 真一

経歴 一般財団法人日本食品分析センター 理事
1986年財団に入所し、医療機器、医薬品、食品、化粧品及び生活関連物資等の生物学的安全性評価に従事。1997年佐々木研究所研究生として毒性病理学及び発癌病理学研究に携わる。1999年東京農工大学農学部獣医学科産学共同研究員として生殖内分泌学研究。日本毒性病理学会評議員、ISO/TC194国内委員会、ISO/TC194 WG10 Technical ExpertやJIS関連の委員などを歴任。財団では薬事安全性部門を主管し、GMPやGLP対応を主導。情報システム部門担当を歴任。大阪彩都研究所長を経て現在北海道千歳研究所長。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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